不動産投資をするときには、自ら確定申告をする必要があります。確定申告するときには、その物件の運営にかかった費用を「経費」として計上できるのです。その際、意外と知られていないのが「貸倒金」についての費用計上です。貸倒金を知っておかないと、思わぬところで税金が高くなってしまいます。そこで今回は、そんな「貸倒金」について詳しく解説していきます。
1.経費の計上
そもそも、不動産投資における「経費」とは以下のような費用のことです。
・ローンの「利息」
・管理費や修繕積立金などのランニングコスト
・火災保険や地震保険などの保険料
・固定資産税などの税金
・賃借人退去に伴うクリーニング費用や修繕費用
これらの費用は、確定申告上「経費」として計上できます。経費として計上できるということは、所得から差し引けるということなので、税金が減るということです。つまり、不動産投資において「経費を知る」ということは、節税につながるということです。
2.貸倒金とは?
では、本題の「貸倒金」の話です。貸倒金とは、賃借人が家賃を滞納したときに、確定申告上「損失」として計上する経費のことです。「損失」として計上するということは、先ほど話した「経費」になるので、その分所得を減らし節税することが出来るのです。
2-1会計について
そもそも、確定申告上「会計」方法は、「発生主義」と「現金主義」の2種類があります。結論から言うと、基本的には「発生主義」という会計方法で計上します。発生主義とは、実際のお金のやりとりに関係なく、契約書などをベースに費用を計上するということです。
つまり、賃貸借契約書に「賃料12万円」と書いていれば、お金が実際に支払われたかは関係なく、確定申告上「不動産所得12万円」と計上するということです。つまり、家賃が滞納されているときでも、あくまで賃貸借契約書では家賃収入が「発生」しているということになるのです。
そのため、貸倒金という「損失」を計上することで、その所得と損失を相殺して、家賃収入を0円として計上するというワケです。
一方、現金主義が採用されることは、ほとんどありません。現金主義は実際のお金のやり取りベースで計上するので、口座の確認など「手間」が多くかかるからです。個人経営ならまだしも、大きな会社になると万単位の戸数を管理しています。そのため、現金主義にしてしまうと計上も大変ですし、それを確認する税務署も大変になるのです。
2-2貸倒金
なぜ、経費の中でも貸倒金を知っておくべきかというと、実は貸倒金は簡単に計上できない費用だからです。なぜなら、貸倒金を計上するには、その家賃が「確実に回収できないとき」だからです。言い換えると、その家賃を回収できる確率が少しでもあるなら、貸倒金としての計上は不可能ということです。
貸倒金として「損失」計上できないということは、家賃をもらっていないのに「もらっている」となってしまいます。その分、所得は上がり、もらってもいない収益にかかる税金の支払いが発生してしまうのです。
3.貸倒金が計上できない具体例
では、どのようなときに貸倒金は「回収できる」と見なされ、確定申告上「損失」として計上できないかを解説します。今回は、賃借人が「法人」と「個人」の場合で分けて解説していきます。
3-1法人の場合
賃借人が法人の場合には、その法人が「会社更生」「民事再生」、または「破産」したときに貸倒金として計上できます。要は、客観的に見て法人の「支払い能力」がなくなったときということです。言い換えると、法人が単に「経営が苦しい」というだけの状態で、キャッシュフロー上家賃の支払いができないときは貸倒金としての計上はできません。
3-2個人の場合
一方、賃借人が個人の場合のお話です。こちらの方が一般的なケースなので、良く覚えておきましょう。賃借人が法人でなく個人の場合は、「自己破産」を賃借人が行ったときなどは「貸倒金」として計上できます。これも法人の場合と同様、「客観的に支払い能力がなくなったとき」です。
または、オーナー自身が「債権放棄」して、「もう家賃の回収はあきらめました」と意思表示することで貸倒金として計上できます。一般的に貸倒金として計上するときは、この「債権放棄」をするケースが多いです。
この賃借人の「自己破産」やオーナーによる「債権放棄」以外の例では、以下のようなときも貸倒金として計上できます。
・賃借人が部屋を出ていき1年が経過した
・債権の取り立て費用が明らかに滞納家賃を上回っている
このように、そもそも客観的に見て「回収は難しそう」と判断されれば、貸倒金として計上できる場合もあります。しかし、これらはケースバイケースで、明確な判断基準はありません。そのため、貸倒金として計上できるか分からなときには、税務署や税理士に相談をしましょう。
4.まとめ
このように、不動産投資をしている人は以下の点を理解しておきましょう。
・貸倒金は「損失」として計上できる
・賃借人が法人でも個人でも貸倒金として計上できるかは状況による
・貸倒金として計上できなければ支払う税金が増える
・貸倒金として計上できるかどうかは税務所や税理士に相談する