お持ちの不動産(土地・家・マンション)をそろそろ次の世代へ相続しようかな、などと考えておられる方は、どうするのが一番お得なのか、今日でハッキリさせましょう。節税対策について気になることをすべて解決して、不動産を売る・あげる・相続するのどれが税金面からみてお得なのかをまとめてみました。
◆不動産(土地や家、マンションなど)を売却、贈与、相続すると、それぞれの税金は?
親から子へ、不動産は受け継がれていきますね。それは生前に決めても良いでしょう。
不動産の名義人の生前が良いか?死後が良いか?税金の面からみるとどうなのでしょうか?
今回はそれぞれ、時系列にすると下記のようになります。
1.売却 (生前)
2.贈与 (生前)
3.相続 (死後)
上記の選択によって、一番得になるのはどれでしょうか?
かかる税金は主に下記のようになっています。
不動産を…
売却 → (利益が出たら)所得税、住民税
贈与 → 贈与税
相続 → 相続税
◆不動産を 売却 した際の税金
不動産を売却した際、利益が発生すれば譲渡所得として所得税と住民税が課せられます。この場合の譲渡所得税は事業所得や給与所得とは分離され、分離課税として計算します。
譲渡所得の計算方法は、譲渡価格から売却する不動産を取得した費用(購入代金や購入手数料、購入後に発生した改良費や設備費などの合計額)と譲渡費用(譲渡するための仲介手数料など)を差し引いた額です。先祖の土地など、取得した金額がわからない場合は、売却金額の5%相当額とすることができます。例えば3,000万円で売却した土地なら取得費は5%の150万円です。
また、課税される譲渡所得はさらに譲渡所得から特別控除を差し引いた額になります。
・譲渡所得=譲渡価格-(取得費+譲渡費用)
・課税譲渡所得=譲渡所得-特別控除
特別控除は6種類があり、それぞれの要件を満たしたものが限度額まで控除されます。詳しくは国税庁のホームページをご覧ください。
◇不動産売却時の所得税・住民税率
譲渡所得税には課税長期譲渡所得(5年以上所有した不動産の場合)と課税短期譲渡所得(5年未満の所有不動産の場合)があり、それぞれ税率が異なります。長期の場合は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%の税率。短期の場合は所得税30%、住民税9%、復興特別所得税として基準所得税の2.1%の税率となっています。
所得税率 | 住民税率 | |
---|---|---|
短期譲渡所得(所有5年以下) | 30% | 9% |
長期譲渡所得(所有5年超) | 15% | 5% |
※平成25年~49年まで、復興特別所得税が別途で課税
復興特別所得税 | 所得税 × 2.1% |
---|
売却利益がでる場合、大体の利益の20%が支払い税額です。
・長期譲渡所得税の計算例(課税譲渡所得が3,000万円の場合)
3,000万円×15%=450万円(所得税)
450万円×2.1%=94500円(復興特別所得税)
3,000万円×5%=150万円(住民税)
◆不動産を 贈与 した際の税金
不動産を贈与した場合、贈与された人が不動産の評価額に応じて贈与税を支払う必要があります。土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があり、路線価が定められている土地の場合は路線価方式で、路線価が定められていない土地の場合は倍率方式で計算します。
・路線価方式
路線価方式での土地の評価計算は、定められている路線価(千円単位で表示されている)をその土地の形状に応じた奥行価格補正率などで修正し、その土地の面積を乗じて評価額を算出します。例として表面路線価が300千円、奥行補正率1.0、土地面積180平方メートルの場合の計算は以下になります。
300千円(正面路線価)×1.0(奥行価格補正率)×180(面積)=54,000千円(評価額)
・倍率方式
路線価が定められていない場合の土地の評価計算は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を算出します。
【贈与税の計算方法】
贈与税の税率は、「一般贈与財産」と「特例贈与財産」に区分されています。
「特例贈与財産」とは、直系尊属(祖父母や父母)からの贈与があった20歳以上の人を対象とした税率で、「一般贈与財産」とは特例贈与財産に該当しない人(兄弟間・夫婦間・20歳以下の子供への贈与など)の税率です。尚、贈与税の基礎控除は110万円になっています。(1年間に贈与された金額が110万円以下なら無税)
【特例贈与財産の税率と控除額】
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 400万円以下 | 600円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 4,500万円以下 | 4,500万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | - | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
【一般贈与の税率と控除額】
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | - | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
・特別贈与財産の計算例(贈与額1,000万円の場合)
1,000万円-110万円=890万円(課税価格)
890万円×30%(税率)-90万円(控除額)=177万円(贈与税額)
◆不動産を 相続 した際の税金
亡くなった人から不動産を相続した際、贈与の場合と同じく、土地の場合なら路線価方式または、倍率方式によって評価額を計算します。相続税は全ての財産の総額から、債務や葬式費用、非課税財産を引いて遺産額を算出します。ここではわかりやすく、不動産だけを相続したと仮定して、計算してみましょう。
不動産の評価額が基礎控除額を超えた場合、相続税が発生します。
・3,000万円+(600万円×相続人数)=基礎控除額
仮に相続人が妻と子供2人の場合、相続した土地の評価額が1億円とします。
・1億円-(3,000万円+600万円×3)=5,200万円
妻が2分の1子供はそれぞれ4分の1の遺産額を受け取ることになり、妻は2,600万円、子供はそれぞれに1,300万円ずつが取得金額になります。
仮に相続人が妻と子供3人の場合、相続した土地の評価額が1億円とします。
・1億円-(3,000万円+600万円×4)=5,400万円
遺産の総額が1億円とすると4600万円を4人で分けることになり、法定相続分の通りなら4600万円の2分の1が妻の分となり、残りの2分の1を子供3人で分けることになります。
またこの場合、妻は配偶者控除(1億6,000万円までは相続税がかからない)によって無税ですが、子供の相続分に関しては、取得金額から控除額を引き、取得金額に応じた税率を乗じた額が相続税額となります。
・1,300万円-50万円×15%=187,5000円(税額)
【相続税の税率と控除額】
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超~ | 55% | 7200万円 |
◇納税を先延ばしにできる
「相続時精算課税制度」(2,500万円控除付き)
納税を先延ばしにできる「相続時精算課税制度」というものを利用すると、2,500万円の控除を受けられます。この制度を利用すると納税を延長できますが、相続時に課税されるため節税にはありません。税金の負担が軽くなるわけではないので注意しましょう。
また、毎年2,500万円の控除を受けられるわけではなく、合計で2,500万円です。複数回に分けて贈与された場合この制度を利用できれば合計2,500万円以内は贈与税がかかりません。ただし、2,500万円以上の部分は税率一律20%が課税されます。
【適用条件】
対象者 | 適用要件 | |
---|---|---|
贈与者 | 65歳以上の親 | 60歳以上の親、祖父母 |
受贈者 | 20歳以上の推定相続人である子 | 20歳以上の推定相続人である子および孫 |
今まで親だけでしたが、平成27年より祖父母も条件に入り、年齢も60歳以上と引き下げられました。また、受け取れるのは子だけでしたが、孫も加わり、全体的に条件が広くなりました。
◆贈与税と相続税を比較
贈与税と相続税を横並びにしてみると一目瞭然です。
不動産の評価額(路線価方式で算出) | 支払う贈与税額(一般贈与) | 相続した時の相続税額 | |||
相続人 | |||||
配偶者健在 | 子ども1人 | 子ども2人 | 子ども3人 | ||
110万円以下 | 非課税 | 配偶者 控除 がある (1億 6千万円) |
非課税 | 非課税 | 非課税 |
300万円 | 435,000円 | ||||
500万円 | 1,305,000円 | ||||
1,000万円 | 3,500,000円 | ||||
2,000万円 | 8,750,000円 | ||||
3,000万円 | 13,750,000円 | ||||
4,000万円 | 19,800,000円 | 400,000円 | |||
5,000万円 | 25,300,000円 | 2,025,000円 | 800,000円 | 200,000円 | |
6,000万円 | 30,800,000円 | 3,525,000円 | 1,800,000円 | 1,200,000円 | |
7,000万円 | 36,300,000円 | 6,400,000円 | 4,050,000円 | 2,150,000円 | |
8,000万円 | 41,800,000円 | 8,400,000円 | 5,550,000円 | 3,925,000円 | |
9,000万円 | 47,300,000円 | 14,100,000円 | 7,050,000円 | 6,075,000円 | |
1億円 | 52,800,000円 | 17,100,000円 | 15,300,000円 | 7,575,000円 |
相続税より贈与税が遥かに高く設定されているのは、「死ぬ前に不動産を譲ること」を防ぐためです。そのため、取得税や登録免許税も相続の方が安いです。
◆まとめ|贈与より相続のがお得!
以上のように、贈与税と相続税では圧倒的に相続税の方が安くなります。基礎控除額の違いをみても一目瞭然でしょう。また売却の場合、利益が出ない場合は税金を払う必要はありません。住んでいる家屋や住まなくなった家屋(住まなくなって3年以内の売却の場合)マイホーム特例(3,000万円の控除)を受けることもできます。
不動産の売却・贈与・相続を考えておられるなら、税のことをよく理解し賢い節税をおすすめいたします。