今の日本では空き家が増えていることが社会問題になっています。また、その空き家の所有者が不明であるというニュースも度々目にします。(⇒【登記の乱れは国の乱れ】土地売却以前の問題!?2割の土地が所有者不明)
今回は、そのような「長い間放置していた所有者不明の家」を売却する方法を解説します。
1.所有者不明のまま売却するとき
結論から言うと、所有者不明のまま家を売却することはできません。なぜなら、売買契約書や所有権移転登記に関しては、その不動産の所有者が署名・捺印する必要があるからです。所有者の署名・捺印以外には、所有者の委任状を取得して売却するという方法もあります。
そのため、長い間放置していた所有者不明の家を売却するときには、家の所有者を突き止める必要があります。所有者を突き止めるときには、以下の点を抑えておきましょう。
・謄本で所有者を探す
・所有者の居所をつかむ
上記2点を理解しておけば、所有者不明の家の所有者が分かるかもしれません。
1-1謄本で所有者を探す
まず、その家の所有者は謄本に記載されています。あまり知られていませんが、その家の謄本は誰でも取得することは可能です。謄本取得の方法は以下2つの方法があります。
・法務局へ行き申請する
・代行業者へ依頼する
上記2点の方法は手間がかかったり費用が発生したりするので注意しましょう。
1-1-1法務局へ行き申請する
謄本は不動産業者以外の一般人でも取得できるので、最寄りの法務局で自ら謄本を取得する方法があります。現在では謄本は電子化されているため、物件が所在している法務局へ行く必要はありません。謄本が電子化される前は、その不動産が所在する法務局へ行く必要があります。
法務局には申請書がありますので、申請書に必要事項を記載して窓口に持っていきます。申請書へ記載するときには、その物件の住所ではなく「地番」を記入するという流れです。法務局内にあるコンピューターで地番は調べられますので、地番を調べてから記入する点は覚えておきましょう。
謄本を受け取るタイミングは法務局の混み具合によりますが、大体数十分以内に取得できるでしょう。費用は1通600円です。
1-1-2代行業者へ依頼する
また、前項のように自ら法務局へ行くのが面倒な場合には、代行業者へ依頼することもできます。ネットで「謄本取得 代行」と検索すれば色々な業者が出てきますが、どれも1,500円前後の費用がかかります。ただ、基本は依頼から数日で郵送対応してくれるので、自ら法務局へ行くよりは楽になります。
1-2所有者の居所をつかむ
家の所有者は前項の方法で知ることができます。その次は、所有者の居所をつかむという段階になります。その所有者が親族などで連絡が付けば良いですが、連絡先が分からない場合は、探偵などに依頼して探してもらうしかありません。
仮に、所有者の連絡先が分かれば、その所有者が主導、もしくは委任状を取得することで家の売却が可能です。ただ、連絡先が分からない場合には、以下の点を抑えておきましょう。
・空き家なら行政に依頼できる可能性がある
・相続時の注意点
長い間放置していて所有者不明ということは、当然空き家であるということです。空き家であれば、その空き家が景観を乱していたり、倒壊の危険性があったりする場合には、行政の方で強制的に解体することができます。
行政の方で解体するときには、まず所有者を行政の方で探し、見つからなければそのまま解体するという流れになります。つまり、行政が「解体する必要のある家だ」と判断すれば、行政の方で所有者を探す作業をしてくれるということです。ただし、この場合には家を「売却」することは出来ず、その家は解体になります。
2点目の相続時の注意点は次項で解説します。
◇突然の事故死や孤独死などで亡くなった場合、また身寄りがいないときの不動産は?
突然の事故死などで亡くなった場合も、通常の死亡時と同じ流れになります。
つまり、遺言状を探し、相続人を探し、相続登記をしてから売却するという流れです。
また、孤独死や身寄りがない場合には、その不動産は国庫に帰属されます。つまり、国が主導で売却などを行うということです。
2.相続時の注意点
長い間放置していた所有者不明の家を自分で売却するというときは、相続が発生しており、自分に相続権があるというときが多いです。具体的には、以下のようなケースになります。
・祖父の所有の家であり父に相続した
・父が相続したものの相続登記を怠った
・父が亡くなり自分が相続をする
つまり、父が亡くなり父の遺産を整理していたら、祖父から相続した不動産があった場合です。不動産の相続は、基本的には相続登記(この場合は祖父から父への名義変更)する必要がありますが、行政がチェックするワケではないので、亡くなった人の名義のまま放置されることもあります。
このような場合には、まさに所有者不明の家がそのまま残ることになります。そのような場合は、司法書士に相談して、上記の例では祖父から自分名義へ相続登記しましょう。そうすれば、名義人が自分になるので、自ら主導して家を売ることができます。
3.まとめ
このように、所有者不明の家の売却は、まず所有者を突き止めることです。「売却する」という状況になるときは、相続絡みのことが多いので、相続登記するという流れになります。売却方法自体は、通常の売却時と同じく、不動産会社に仲介を依頼するといいう流れです。