不動産を売却するときには、「不動産査定書」という言葉を耳にするかもしれません。不動産査定書は2種類あり、それぞれ入手方法や注意点が異なります。その点を理解した上で、不動産の売却に臨みましょう。
この記事に向いている人⇒個人の方、不動産査定に興味がある方。(プロ業者向けではありません)
不動産売却や査定に興味を持っている方の中でも、下記のような方に知ってほしいと思います。
- 不動産査定書は何かを知りたい
- 不動産査定書の書式を知りたい
- 不動産査定書のひな型をダウンロードしたい
- 不動産査定書はどこに依頼するのか知りたい
と思っている方も多いことでしょう。
今回この記事では、下記のポイントを重点的に紹介していきます。
- 不動産査定書とは何か
- 不動産査定書の作成方法
- 不動産査定書の作成に必要なもの
- 不動産査定書を作成してもらうときの注意点
◆目次◆ |
1.不動産査定書とは?
1-1不動産業者が作成する不動産査定書 2.それぞれの用途 3.不動産査定書の見方と注意点 4.まとめ |
1.不動産査定書とは?
不動産査定書とは、読んで字のごとく、不動産の査定額を明示した書面になります。不動産査定書の種類は2種類あり、1つは不動産業者から作成される書面で、もう1つは不動産鑑定士が作成する書面です。不動産業者が作成する書面は、無料ですることができます。一方、不動産鑑定士が作成する書面は有料になっています。
1-1不動産業者が作成する不動産査定書
不動産業者が作成する不動産査定書とは、不動産査定を通常の不動産会社に依頼した際に提出する書面のことです。査定依頼すること自体は無料なので、不動産査定書も無料で入手することができます。
ただ、不動産業者の作成する不動産査定書はフォーマットや形式の指定がないため、言い換えると「自由」に不動産業者が作成することができる書面になります。そのため、不動産業者が持っているノウハウや事例などが反映されているため、不動産業者によって内容が異なってくる書類です。
また、不動産業者の作成する不動産査定書は3か月以内の売却が前提で作成されているので、3か月が経過すると査定額が変わる可能性があります。
1-2不動産鑑定士が作成する不動産査定書
一方、不動産鑑定士が作成する不動産査定書は15万~30万円の作成費がかかります。不動産鑑定士に依頼するので、「不動産鑑定書」といわれることもあります。不動産鑑定士は不動産を鑑定するプロであり、不動産業者は不動産を仲介(売却)するプロです。
そのため、不動産の査定額に対しての対外的な信用度は、不動産鑑定士が作成する不動産査定書の方が高いです。不動産鑑定士は不動産を鑑定できる唯一の国家資格です。そのため、国が定めている不動産鑑定評価基準に基に、不動産の評価を行うというワケです
端的にいうと、不動産業者の作成する不動産査定書は不動産会社の「意見書」のような意味合いで、不動産鑑定士の作成する不動産査定書は、不動産鑑定士が体系的な知識から作成した「客観的な不動産評価額」になります。
詳細はこちらでも⇒不動産業者の査定と不動産鑑定士の鑑定評価の違い
2.それぞれの用途
では、不動産査定書はそれぞれどのような用途で使われるでしょうか。結論からいうと、一般的な不動産取引の場合には不動産鑑定士が作成する書面は不要で、無料で作成依頼ができる不動産業者からの書面で問題ありません。
2-1不動産業者が作成する書面
不動産業者が作成する書面は、そもそも「不動産査定書」と厳密に呼ぶことはあまりありません。そもそも、不動産業者に査定依頼すると、1~2営業日ほどで提出される書面になるので、非常に簡易的な書面になります。
また、実際に不動産を売却するときは、結局周辺で売却されている競合物件や、売主の意思によって売却金額は変わってきます。そのため、不動産業者の作成する不動産査定書は、あくまで参考程度の書面になります。
ただ、先ほどもいったように、一般的な不動産取引においては、このような書面で十分です。一般的な不動産取引は、査定依頼をして「売却目安価格」が知りたいワケであり、対外的に説得力のある金額を知りたいワケではないからです。
2-2不動産鑑定士が作成する書面
一方、不動産鑑定士が作成する書面は、対外的な信頼度が高いので、以下のようなケースで作成されます。
・法人が不動産売買したケース
・相続の際の遺産分割協議
たとえば、法人が不動産売買をしたケースです。仮に、法人同士での不動産取引の場合には、利害関係的に適切な価格でない不動産取引が行われるケースがあります。「現金で支払いができないので、所有している不動産を安く売却する」などのケースです。
しかし、そのような場合には、不動産売却によって得た利益は少額になり、税金も安くなるということです。そのため、税務署から「客観的に不動産価値を評価した書面」が求められるケースがあり、そのときに作成するのは不動産鑑定士が作成した査定書類になるというワケです。
また、相続の際の遺産分割協議時にも、不動産鑑定士に不動産査定書の作成を依頼することがあります。遺産分割をするときには、相続人が複数人いる場合もあります。仮に、現金と不動産の2つの財産があったときに、相続人Aは現金で相続人Bが不動産という別の種類の財産を相続することがあります。
その際、相続人A、Bが公平に相続できるように、不動産の価値をきちんと査定する必要があるということです。そのときには、不動産業者の査定書ではなく、不動産鑑定士が作成した信頼度の高い査定書を利用することになります。
つまり、不動産鑑定士が作成する不動産査定書は、自ら進んで作成依頼するというよりは、税務署などの第三者から依頼されて作成するという流れが多いということです。
2-3不動産査定書のサンプル
不動産業者が作成する一般的な「査定書」は公益財団法人不動産流通推進センターのマニュアルに基づいて作成されています。これが不動産会社が発行している価格査定の目安となります。利用する場合はダウンロードして参考にしてみてください。
【不動産の査定に関する記事】
・不動産業者の査定と不動産鑑定士の鑑定評価の違い
・訪問査定と机上査定の違いは?どちらが良い?
・不動産売却をする前に必ずしておきたい「不動産調査」とは?
3.不動産査定書の見方と注意点
不動産査定書は、書式が決まっているわけではありません。それぞれの不動産会社によって内容も、用紙ですらもまちまちです。何十ページの査定書を作成してくる不動産会社もあれば、A4用紙一枚だけの査定書を報告書として提出してくる不動産会社もいます。
不動産査定書は『型』がない分、自由度が高くそれゆえに見方がわからない等の問題を含んでいます。
そこで、「不動産査定書の良し悪しを見極める6つのチェック項目」を紹介していきます。
3-1不動産査定書の良し悪しを見極める6つのチェック項目
☑1.査定価格が「○○○~○○○万円」とザックリ
不動産の価格は「ピッタリ○○○万円」と断定はしにくいものです。査定額と売却額も違いますから…。
しかし、査定価格に幅がある場合は段階的に提示するなど、売主にわかりやすい提案がベストです。
(例)
査定価格:○○○万円
売却スタート価格:○○○万円
チャレンジ価格(上限価格):○○○万円
査定書は誰のためかというと、売主にわかりやすく伝えるためのものです。
あまりにザックリしている査定書を作成している不動産会社はあまり信用できないかもしれませんね。
☑2.コメントや販売方法がテンプレート通りすぎる
査定書に記載されるのは、価格だけでありません。物件に関するコメントや販売方法などを記載している不動産会社も多いのですが、その内容に注目するとあまりにも「テンプレート通り」という場合があります。テンプレ通りの説明などは手抜きだと感じざるを得ません。ちょっとした点にも手を抜こうとする姿勢の不動産会社に大切な不動産の売却を任せられるでしょうか。
☑3.会社紹介や営業担当者の紹介が少ない
査定書は単なる価格を知るための書類ではありません。販売計画書であり、その会社を知る大切な書類の一つです。
「その不動産会社がどういった会社か」「担当してくれる人はどういった人か」といった売却の中身の部分が少ない不動産会社はあまりオススメは出来ません。
☑4.書体やフォントがバラバラで統一感がない、色使いに気を配っていない
査定書は自由だからこそ不動産会社のセンスがわかります。販売活動をする際は、不動産会社がチラシ(マイソク、販売図面)を作ってもらいます。また、ネットで物件情報を掲載する際も、物件写真が必要です。
つまり、販促活動には少なからず美的感覚が必要です。センスが極端に欠落した不動産会社や営業担当者に当たってしまうと、集客ツールがセンスのないものになってしまう可能性があります。
あまりにも見づらい、センスのない査定書を提出してくる不動産会社は今後の為に避けておいた方が良いかもしれません。
☑5.査定書の枚数があまりにも少ない
査定書はわかりやすさが大切です。ページ数が多ければ多いほど良いわけではありません。ただし、あまりにもページ数が少ない1ページ~5ページほどの査定書は論外です。
査定書の中身とページ数は、不動産会社のやる気にも比例していると考えられます。せめて10ページ以上(添付資料を含む)の査定書を提出してくれる不動産会社とのお付き合いをオススメします。
☑6.流通性比率をいじり査定価格を操作している
もはやこれは論外ですが…。「流通性比率」という聞きなれない単語が使われていて、査定書もパッと見はわかりませんが、詳しくチェックしてみてください。
流通性比率とは、「その物件が売りやすいか売りにくいかという流通の度合いを数値化した比率です。1.00(100%)を基準に、マイナス15%~プラス10%の範囲で売りやすければプラス、売りにくければマイナスと評価します。」公益財団法人不動産流通推進センター「価格査定マニュアルによる戸建住宅の査定」より)」と定義されています。物件の売れやすさ、売れにくさを査定価格に反映させるための調整方法です。
しかし、不動産業界の実務では、本来の趣旨と異なる使われ方が横行しているようなのです。
どのような流通性比率の使われ方かというと、営業担当が査定額を算出した際に予想以上に査定額が高くなってしまった、あるいは低くなってしまったといった場合です。
本来であればマーケット動向を再度精査し、根拠ある査定価格を導き出すべきなのですが、そうすると手間も時間もかかります。
そこで、あまり聞き馴染みのない「流通性比率」を上げたり下げたりして査定価格を営業担当者側の想像の範囲に意図的に収めようとするのです。
流通性比率の欄に「1.00」以外の数字が入っていたら、その根拠を営業担当者に質問してください。
その質問に納得できる返答があれば問題はありませんが、曖昧な回答や、しどろもどろになる等、あからさまにごまかす素振りをしていたら、その不動産会社は何か隠している可能性があるので、ここには任せられないと判断するべきです。
『不動産査定書の良し悪しを見極める6つのチェック項目』まとめ
1.査定価格が「○○○~○○○万円」とザックリ
2.コメントや販売方法がテンプレート通りすぎる
3.会社紹介や営業担当者の紹介が少ない
4.書体やフォントがバラバラで統一感がない、色使いに気を配っていない
5.査定書の枚数があまりにも少ない
6.流通性比率をいじり査定価格を操作している
4.まとめ
このように、不動産査定書には2種類あり、一般的には不動産業者の作成する不動産査定書で問題ありません。対外的な「証明」として必要な場合のみ、不動産鑑定士が作成する査定書が必要になります。
不動産会社が作成する査定書は無料で作成してもらえます。というのも、不動産会社は査定にかかった費用を依頼者に請求できないことになっています。
売主からの査定依頼は不動産会社にとっては見込み客になるので喜んで対応してくれるでしょう。基本的にはどの不動産会社も査定を行えます。
気兼ねせずに不動産会社の査定依頼を出しましょう。
◇一括査定サイトの利用が便利
不動産査定は、1社だけに依頼することも可能ですが、いまは「一括査定サイト」という便利なものがあるので、それをたくさん使っていけば良いと思います。
髪も1本1本洗わないように、不動産査定など面倒なことは、一括査定サイトにまとめて依頼する時代です。
圧倒的に時間が短縮できるだけでなく、精度も高いので利用する人が多いんですね。