物件によっては、「事故物件」と認定されるマンションもあります。事故物件になると中々売りにくいので、不動産会社選びなどは慎重に行わなければいけません。今回は、そんな事故物件の売却について詳しく解説します。
1.事故物件について
そもそも、事故物件とは不動産の建物内や敷地内で事故があった物件のことです。事故とは、具体的には建物内で自殺や殺人があった物件のことです。
1-1心理的瑕疵
不動産の売買のときには、瑕疵担保責任という責任が売主にはあります。瑕疵とは「欠陥」のことで、心理的な瑕疵とは、買主が心理的に被害を受ける出来事のことです。つまり、物件内で殺人や自殺などがった場合には、買主は心理的に不安になりますので「心理的瑕疵」と呼ばれます。
⇒「心理的瑕疵あり」は事故物件などが関係している!売却時の告知義務について
⇒自殺や殺人事件などの事故物件、「心理的瑕疵」の範囲詳細
1-2事故物件かどうかの判断
宅地建物取引業法(宅建上)47条に「取引の判断に重要な影響を及ぼす重要な事項」と書いてあります。心理的瑕疵である事故物件は、この47条に記載してある「重要な影響を及ぼす事項」に該当します。
ただ、明確に条項が決まっているワケではないので、事故物件になるか曖昧な点もあります。たとえば、3棟構成で1,500戸を超える大規模物件の1部屋で自殺があったとします。しかし、自殺があった部屋は棟も異なり、距離的にも「別のマンション」と言っても差し支えないくらい離れた場所でした。
このようなときには、物件が事故物件になるかは非常に微妙なラインです。ただ、結論から言うと、買主には伝えておいた方が良いです。もし伝えなかったら、引渡後に買主が「事故物件を隠された」と主張する可能性もあります。そのため、把握していることは全て伝えておくのが無難です。
1-3事故物件の売却
そもそも、事故物件であれば、前項で説明した宅建業法47条により買主には必ず伝えなければいけません。これを「告知義務」といいます。事故物件を売却するときの注意点は、まずは必ず不動産会社に伝えるという点です。
不動産会社も過去のニュースなどを調べることができる「日経テレコン」などで調査はしますが、見落とすということもあり得ます。ただ、先ほどいったように引渡後でも買主から指摘されることはあるので、知っている限りの情報は全て不動産会社に伝えましょう。
一般的には、事故が発生してから7年を目安に告知義務がなくなると言われています。ただし、その事故が凄惨な事件であったり、買主の心理的な負担が大きい内容であったりする場合には、7年経過しても告知した方が良いでしょう。その辺りの判断は不動産会社と相談するべきです。
1-4事故物件売却時の注意点
事故物件を売却するとしても、特別な売り方をするワケではありません。通常通り、不動産会社に査定をしてもらって、媒介契約を締結した後に売却活動に移ります。ただ、申込をもらう前に告知をしておくという点は通常の売却と異なる点です。
注意点は、「顧客をたくさん抱えている不動産会社を選ぶ」という点と、「査定価格は下がる」という点です。事故物件は、その事故を「受け入れられるか」が大事な要素になります。そのため、顧客をたくさん抱えている不動産会社でないと、いつまで経っても検討客が現れないという事態になりかねません。
また、事故内容にもよりますが、査定価格は10%~30%以上は下がると思っておきましょう。物件の状況と事故内容によっては半値以下になることさえあります。そのため、通常の売却以上に、たくさんの不動産会社に査定依頼をして、少しでも高値で売ってくれる不動産会社を見極めなければいけません。
2.買取をする
事故物件を売却する方法としては、物件を不動産会社に買い取ってもらうという方法もあります。ただ、買取を行うとさらに査定額が下がる可能性がある点は認識しておきましょう。
2-1買取のメリット
事故物件を買い取ってもらうメリットは、何と言って「売却活動が短くなる」という点です。買取は、不動産会社と価格の合意さえできれば良いので、いちいち部屋を見学させるなどの手間はかかりません。通常の売却で事故物件を売却するときには、売却活動が長引く可能性が非常に高いです。
先ほどいったように、そもそも検討顧客が現れにくいですし、普通の物件と比べて激しい値引きを提示されるからです。その点、買取であれば売却活動は短いので、不動産会社はさっさと事故物件を売却してしまいたいときに有効な手段です。
2-2買取のデメリット
事故物件を買い取ってもらうデメリットは、上述したように査定金額が下がるという点です。そもそも、不動産会社は買い取ってから第三者へ転売するので、通常の物件でも買取時は相場価格以下の金額になります。一般的には、相場価格の70%~90%程度まで価格が下がります。
事故物件は、そこからさらに価格が下がるので、ただでさえ安い金額がさらに安くなってしまうということです。そのため、一定期間売却活動をしてから買取の選択肢を選ぶ方法がおススメです。ただ、安くても良いからとにかく売却したい人は、買取でサッサと売ってしまうのも有りです。
3.まとめ
このように、事故物件を売却するときは一筋縄ではいきません。
事故物件を売却したいという場合は、
・売値が10~30%ほど下がる
・必ず告知する
・瑕疵担保責任(特に「心理的瑕疵」)について知る
・買取も視野に入れる
これらの点に注意してください。
売却が厳しい状況になることも予想されるので、通常売却と平行して買取業者の査定を行っておきましょう。その方が、迅速に買取へ移行できます。
また、その際は不動産査定一括サイトを利用してください。
事故物件などは特に複数の不動産業者に見てもらってから検討したほうが良いのです。
例えば1社目で決めてしまうと、知識がない状態なので「事故物件はこれくらいでしか売れませんよ」という不動産業者の言葉を鵜呑みにしてしまい騙されてしまうかもしれません。
また、できるだけ経験豊富な仲介業者にお願いするためにも、複数査定はいまや常識です。