不動産投資をしていると、赤字経営になることもあります。不動産投資は「所得」になるので確定申告が必要ですが、赤字の場合には税金が還付される場合もあります。それは、不動産投資ならではの強みとも言える部分です。
今回は、不動産投資で赤字になったときに確定申告すると税金還付が受けられるという点を詳しく解説します。
1.不動産所得は総合課税
赤字であるマンションを売却すると、確定申告で税金が受けられる理由は、不動産所得は「総合課税」だからです。総合課税とは、ほかの収入と合算して税金を算出するという方法です。混合されやすいのですが、不動産の売却益にかかる「譲渡所得税」は分離課税になります。
分離課税とは、ほかの所得と合算せずに、その所得単体に課税されるという意味です。株やFXなど、ほかの投資には分離課税が多く、総合課税になる投資はほとんどありません。
1-1総合課税の実例
たとえば、以下のような状況で不動産投資をしたとします。
・サラリーマンの給与所得が750万円
・今年の不動産所得がマイナス150万円
このようなときには、750万円から150万円をマイナスした、600万円がその人の所得になります。つまり、150万円分、所得税が下がるということです。
仮に、これが総合課税ではなく、分離課税の場合には何の恩恵も受けられません。なぜなら、マイナス150万円に対しては税金が「かからない」というだけなので、税金が「下がる」ワケではないからです。
1-2所得税は累進課税
所得税は、以下のように所得が上がるほど税率が上がっていく「累進課税」です。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁
つまり、年収が750万円のときは「750万円×所得税23%-控除額63.6万円」なので、所得税は108.9万円になります。一方、前項のように不動産投資で150万円の損失を計上した場合は、「(750万円-150万円)×所得税20%-42.75万円」となり、77.25万円の所得税です。
つまり、不動産所得でマイナス計上したことによって、31.65万円分(108.9万円-77.25万円)の節税が出来ているということです。サラリーマンは源泉徴収で毎月自動的に税金を徴収されています。そのため、翌年に確定申告することで、支払い過ぎた税金が還付されるという流れです。
一方で、個人事業主などは、事業所得と合算してまとめて確定申告します。その場合には、税金還付という流れではなく、そもそも納めるべき税金が安くなります。
2.赤字のマンションとは?
このように、不動産投資をしていてマンションが赤字になると、節税効果があります。しかし、「毎月決まった賃料をもらっているはずなのに、なぜ赤字になるのか?」と疑問に思う人もいるはずです。そのような人は、不動産投資は以下の要素がある点を抑えておきましょう。
・経費計上できる
・減価償却や初期費用もある
2-1経費計上できる
不動産投資をしているとき、その不動産にかかった以下の金額は経費として計上できます。
・物件取得時の諸費用(仲介手数料、登記関係費用)
・固定資産税
・ローンの利息部分
・管理費、修繕維持積立金
・室内の補修費
・減価償却費
その他はこちら⇒不動産で所得があったときの確定申告、得をする経費12選
上記のように、その物件を取得したときにかかった諸費用は経費になりますし、固定資産税も経費として計上できます。また、ローンを組んで不動産を購入したときは、ローンの利息部分のみ経費として計上できます。
さらに、投資した物件がマンションであれば、そのマンションにかかる管理費・修繕維持積立金も経費になります。そして、賃借人が入退出するときに修繕すれば、その修繕費用も経費計上できるのです。
経費の項目の中で「減価償却費」が最も高額になります。減価償却費とは、物件取得費用を何年かに分けて経費として計上することです。減価償却費を算出するときは、不動産会社に聞くか、国税庁の確定申告作成コーナー※1でも自動計算できます。
2-2赤字になる事例
前項の通り、経費計上できることにより、マンション経営は赤字になることもあります。以下のように、経費項目が多い「物件初期」が最も赤字になりやすいです。
・年額家賃収益:150万円
・物件取得時諸費用:120万円
・ローン利息:13万円
・固定資産税:12万円
・管理費、修繕維持積立金:15万円
・減価償却費:85万円
つまり、上記の場合は収益の150万円からそれ以外の経費をマイナスし、95万円の赤字になるということです。そのため、年収750万円の人であれば、年収655万円として所得税が計算されます。
3.まとめ
このような仕組みで、不動産投資は赤字マンションであれば税金が還付されます。総合課税であるという強みもありますが、実物資産なので「減価償却ができる」という点が、投資をする上で大きな強みになります。