不動産の買戻しとリースバックとは?

今回は、不動産の「買戻しとリースバック」についてご説明致します。そもそもなかなか聞き慣れない言葉だと思いますので、先ずはその意味から説明していきたいと思います。正直に言って、基本的には買戻しというのは実用がほとんどありません。

しかし、「買戻しやリースバック」を利用すると、不動産を売却した後でも今の家に住み続けることが出来る、という特別な措置を受けることが出来ます。その他に「リース」を用いるわかりやすい単語はリース契約サブリースなどがあります。リースバックとは、住宅ローンの支払いが厳しいけど、家を手放したくない…と悩んでいる方にとっては、一つの方法として有効かもしれません。

少しでも興味を持った方はこちらで不動産の買戻し・リースバックの仕組みや注意点を把握し、不動産会社に相談してみましょう。

◆不動産の買戻しとは?

そもそも買戻しとは不動産の売買契約の際に結ぶ特約条項の内容となります。簡単に言えば、『売却した不動産を最長10年間であれば売買代金と契約費用を返還することによって買い戻す事が出来る』という内容です。

一般的には、『不動産を担保に借りている債務の返済ができず、売却により返済をしたいが、将来的に資金に余裕ができた際に買戻したい』という方の為のものです。

しかしながら実際のところはほとんど実用性が無く、不動産取引の現場ではあまり見ることのない制度です。

◇身内が購入し、第三者に渡るのを防ぐ

買戻しを一般的に説明すると、親や兄弟・親戚などの家族や友人に、家を購入してもらうことを指す特殊な売却方法です。これによって、第三者が所有することを防ぐことができ、任意売却されたり競売にかけられてしまうといった最悪の事態を防ぐことに繋がります。住宅ローンが払えない場合、第三者に渡ったり任意売却・競売という方法を取られてしまうと、家を取り戻すのが非常に難しくなるため、先手を打っておくのです。また、身内に売却すれば、お金に余裕が出来たときに買い戻せるためです。

通常であれば、不動産を売却したお金でローンを返済し、買主に家賃として毎月の返済を行い、将来的に買い戻すことを目標としています。そうすることで、毎月の家賃は無駄にならず、返済額や契約期間をあらかじめ決めておけば、信用できる家族や友人だと事情をわかってくれるというのも買戻しの大きなメリットです。

ただし、親子間での買戻しは、住宅ローンの審査に落ちてしまう可能性があります。それは、一般的に親子同士での不動産の譲渡は、相続として考えられるので、ローンの審査に通らないことが多いのです。また、住宅ローンの借り換えとして利用する目的で不動産売買を偽造することも考えられ、銀行は融資により慎重にならざるを得ません。

間に不動産会社が仲介に入っていて、適切な査定を行っていることが証明されれば、ローンが認められるケースが多いので、「買戻し」を利用する場合は専門家に相談するのが一番です。

◇「買戻し制度」が作られた目的は?

実際には、買戻しを利用される実例はほとんどありません。では何の為に存在しているかというと、現在では旧住宅・都市整備公団などが分譲したものの転売を防止する目的で利用されています。利益目的の為の転売などが発覚した際に、事業主がその不動産を買い戻すことによって、阻止する目的で使われるケースがほとんどです。

不動産売買において、金額や期間などももちろん大事ですが、後腐れがない事も非常に大事です。売買契約後、特約として成立しているとはいえ、向こう10年の間特約に縛られるというのはあまり得策とはいえません。その時は良いと思っていても、10年もあれば人のライフスタイルは大きく変わります。買戻しを請求した際に揉めるという事も容易に考えられますので、基本的にはあまりオススメできません。

では今の住まいは失いたくないが、お金には困っているという方は一体どうすれば良いのでしょうか。そんな方の為に存在するのが、『リースバック』というシステムです。

◆不動産のリースバックとは?

リースバックとは、第三者へ不動産を売却し所有権は移転するが、そのまま住み続けることのできるシステムの事です。所有権の無い不動産に住み続ける?と思われるかもしれませんが、ここで登場するのが賃借権です。先ほど買戻しは身内がほとんどと言いましたが、それが他人(第三者)になるのがリースバックです。

おそらくお読み頂いても何のことかさっぱり?と言う方もいらっしゃると思いますので、簡単にご説明させて頂きます。

Aさん
・不動産所有者であり、今回自宅の売却を希望しているが可能であればそのまま自宅として住み続けたいと思っている。

Bさん
・投資用として不動産の購入を希望。

Aさんの目的は、自宅の現金化と、現自宅を継続して住み続ける事です。

Bさんの目的は不動産投資。購入した不動産を賃貸に出す事で、不動産収入を得ようとしています。

上記の様なAさんとBさんの不動産売買で役に立つのがリースバックというシステムです。

まず一般的な売買同様に、所有権はAさんからBさんへと移ります。そして、本来であればAさんは所有権の移転と同時に部屋を空け渡さなければなりませんが、ここでリースバックの登場です。次にAさんとBさんの間で、Aさんを賃借人、Bさんを賃貸人とする賃貸借契約を結びます。これにより、Aさんは自宅を売却し、所有権はBさんへと移すものの、賃借権によって今の自宅に住み続けることができます。もちろんこれはBさんにとってもメリットがあります。それは賃貸人を探す手間と時間がかからない為、投資のリスク回避になるのです。

売買契約の時点で取引後、Aさんが賃借人になる事が決定しているのですから、Bさんにとっても賃借人がつかないというリスクを回避して、安心した不動産投資を始める事ができます。

この様に、所有権は移るが、代わりに賃借権を得る事によって不動産を現金化しつつ、住み続ける事ができるというシステムがリースバックです。

これだけを見ると、リースバックとは双方にとって非常に良いシステムの様に見えますが、実際の不動産取引の場ではそう上手くはいきません。ここからはリースバックの注意点について説明していきます。

◇リースバックの注意点

①家賃が発生する

これは当たり前ですが、売却後は他人の不動産に賃借人という形で入居する為、毎月の家賃が発生します。その為、近隣の家賃相場や自宅を賃貸に出した時のおおよその賃料を事前に調べておかないと、割高な賃料で住み続ける事になってしまう事もあります。

また、住宅ローンがある場合には、本当にローンの返済額と、賃料を払い続けることのどちらが良いのかをしっかりと確認をした上で行わないと、一時的に現金は手に入るものの、結局将来的に金銭的に厳しくなってしまう。という本末転倒な結果に陥ってしまいます。

②売買金額が下がる可能性が高い

一般的な中古不動産は、オーナーチェンジ(賃貸中)よりも、居住中又は空室である方が高値でご成約になる可能性が高いです。理由としては非常に単純で、需要が高いからです。

オーナーチェンジの場合、ターゲットとなる買主は投資用として探している方のみですが、居住中又は空室であれば、その投資用はもちろん、居住用としてお探しの方やセカンドハウスとしてお探しの方もターゲットとなる為お客様の層がより増えます。その為、リースバックを条件とした売却は需要が限られ、普通の売却と比べて金額が下がる可能性が非常に高いです。

③買主が極端に限られる

普通投資用の不動産を購入される方は、

1.空室のお部屋を購入し、賃貸にだす
2.賃貸中のお部屋を購入し、そのまま賃借人を住み続けさせる

上記の2パターンがほとんどです。リースバックというシステム自体まだあまり浸透していない為、個人の買主に対してリースバックを条件とするとおそらくその買主は戸惑うと思います。

買主の思考としては、

・もしかしたらこの売主はお金に困っていて早く売りたいのではないか?
⇨つまり金額の交渉ができるのではないか。

・売主が高齢又は無職の為、売却後の住み替え先などが無いのではないか。
⇨将来的に室内で亡くなられて事故物件になったり、家賃の滞納が発生するのではないか。

などというあらぬ方向に陥ってしまい、購入そのものを検討頂けなくなってしまう場合があります。こう言った先入観は不動産取引では非常に問題で、一度植えつけられた先入観は、営業マンや売主がいくら説明してもなかなか買主の頭からは消えてくれません。

この様に、リースバックには

不動産の現金化
継続して自宅として住み続けられる

というメリットの反面、その契約自体が非常に難しいというデメリットが潜んでいる事に注意して下さい。

◆買戻し・リースバックの注意点

それぞれを利用する際は、下記の二つに注意してください。

◇自ら金融機関と交渉しない

例えば、身内に不動産を売却できることが決まり、買戻しを計画していても、自分で金融機関へ交渉に行き住宅ローンを組もうとするのは絶対にやめましょう。住宅ローンの交渉には、本来不動産売買の知識とノウハウが必須です。住宅ローンを組む際には必要書類などが多数あるため、専門家に依頼するのが一番です。

身内の方に買戻しをすることを承諾してくれたとしても、まずは専門家に相談してください。

◇買戻し・リースバックに慣れている業者に依頼しよう

最初に言った通り、買戻し・リースバックは不動産売買の中でも特殊です。

そのため、慣れている不動産会社でないと、依頼しても意味はありません。まずは相談することと、買戻し・リースバックの過去の例について詳しいか確認してみましょう。

相談は無料で対応してくれる業者も多いです。

「住宅ローンの返済が厳しい」場合の解決方法について、具体的な案を出してもらいましょう。

◆最後に

今回は、リースバックというシステムをご説明致しましたが、基本的には苦肉の策だと思って頂けると良いと思います。債務の返済が難しい、不動産を現金化したい。という場合には次の住み替え先や、売却後の事を事前に営業マンとしっかり話し合い、普通に売却をしていく方がメリットが大きいですし、ストレスもかかりません。

現在は賃貸のシステムも多様化しており、無職の方や高齢者でも、現金を所有している事で賃貸ができたり、UR賃貸など多少割高ではありますが、家賃を現金にて前払いする事で入居ができるものなどその仕組みも様々です。

まずはご自身だけでお考えにならず不動産のプロに相談してみるのが1番ではないかと思います。

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