売却を検討する際、経年劣化と向き合いながら売却を進めていくことになります。
それはマンションでも一戸建てでも同じです。水回りや建具の高さなど、建てられた時期により大きさや配置、高さが変化します。例えば、水回りは10年以内のマンションであればユニバーサルデザインが取り入れられており、お風呂場と廊下に段差がない設計が施されています。
一方、昭和30年代等築年数が古いマンションの水回りは、排水管の高低差を取るために一段高く設けられていることが多いです。
こうした築年数による設備の劣化や、機能の変化は変えられません。
今回は売却にあたり「築年数」によって発生する家の特徴を意識しながら、いかに高く査定してもらうか、具体的な方法を紹介していきます。「築年数」はそれぞれ築浅・築10年・築20年・築30年・築40年に分けてご紹介します。査定額を少しでも高く見積もってもらい、高値売却を目指しましょう。
◆目次◆ |
◆築年数によりメンテナンスが必要になる設備と行政法規の紹介
◇築浅物件では ◆具体的な修繕、高く査定してもらう方法 ◇築10年の対応方法について ◆「限界マンション」とは? ◆「マンション敷地売却制度」とは? ◆まとめ |
◆築年数によりメンテナンスが必要になる設備と行政法規の紹介
築浅・築10年・築20年・築30年・築40年の10年単位で紹介していきます。主に発生する設備の劣化と、不動産に関する税金等行政が整備している法律を紹介します。
◇築浅物件では
築浅物件はほとんどメンテナンスの必要はありません。不動産は築年数が浅ければ浅いほど売れやすいので、特に手を加える必要はないでしょう。
ただし、築年数が短いがゆえに、売却理由が気になる方も多いと思いますので、売却理由は隠さず明かし、「良い物件だ」と思われるようにしましょう。
◇築10年では
設備については、「壁紙・扉」のメンテナンスが発生します。
壁紙は日照の良いリビングや湿気がたまりやすいトイレ、洗面所などの水周りで消耗します。愛煙家の方の場合、ヤニによる汚れも発生します。
扉は開閉が多いリビングの入り口や、トイレ等で不具合が生じます。
◇築20年では
設備については、「水回り」のメンテナンスが発生します。
トイレのウォシュレット機能や、食洗機の大きさや機能、シンクの汚れや機能など。買い手が「古さ」を感じるようになります。
行政法規については、「住宅ローン控除」の適用の可否が挙げられます。取得日から25年以内か否かが分岐点となります。販売前にしっかり確認しておきましょう。
◇築30年では
設備については、「給湯器」のメンテナンスが発生します。
給湯器の故障が増えるのが築後30年です。水回りや外壁に比べ目で確認することがなく忘れがちですが、子どもの自立などライフスタイルが変化する時期のため売却を検討しやすい時期でもあります。新しい給湯器の方が、熱効率等もよく交換の検討時期になります。
行政法規については、新耐震基準の適用の可否が挙げられます。
2017年は、新耐震基準で建設された建物が築後36年を迎えます。境目の時期ですので、販売前に確認をしておきましょう。
◇築40年では
設備については、「外壁・給排水菅の交換」のメンテナンスが発生します。
マンションであれば修繕計画に入っているでしょう。一戸建ての場合は、クラックなどが目立つようになるため、一度計画を立て塗り直しなど予定を入れるといいでしょう。
◆具体的な修繕、高く査定してもらう方法
それでは、各箇所の修繕やそれらをどう高く査定してもらえるか紹介します。
中古売買の場合、取引の基本は現状のまま取引を行います。
売り手としては、お金をかけずに高く売りたいというのが本音です。
そこで、指値交渉を踏まえ最終的に希望金額を受け取れるよう次のことを押さえることをおすすめします。
◇築10年の対応方法について
壁紙は、ヤニがついてると次の方は壁紙を交換することが多いです。日当たりによるやけの場合はその程度によります。多少のやけであれば、次の方がそのまま使うこともあります。
そのため、売り出し価格は壁紙のリフォーム費用を上乗せし、その金額を価格交渉の幅とすると良いでしょう。
扉の場合、壁紙よりも修繕費が高くなります。傷は浅い場合は、ホームセンターで傷隠しを購入し修繕するといいでしょう。DIYで対応可能な範囲である取っ手や蝶番の修繕は、販売前に行う方が割安です。
修繕を行ったのち、希望の販売価格を設定するといいでしょう。
その際に、査定は修繕を行ってからしてもらいましょう。
◇築20年の対応方法について
水回りは、毎週のどれだけ掃除をしているかによって清潔さや機能の不具合の有無が決まります。そこで、普段からマメに掃除をしておくようにしましょう。余裕があれば、定期的に掃除専門業者に掃除を依頼しておくといいでしょう。
水垢など、素人が掃除をしてもなかなか取れないものです。鏡の水垢やくもり、蛇口のパッキン付近のカビは他の部屋と比較しやすい箇所になります。
こうしたエリアは普段の掃除を丁寧に行えば、清潔を保つことができます。
ある程度清潔だと思ってもらえれば、シンクにヒビ等が入っていない限りそのまま使う買い手も出てきます。
このように、修繕が高い水周りの交換をしなくても済むようメンテナンスを心がけましょう。
次に、マンション等耐火建築物の建物の場合、取得日以前25年以内に建築された建物であれば住宅ローン控除を受けることができます。そのため、新築時から25年以内に売却をすると、次の買い手も控除を受けることができ購入の動機を自然と後押しすることができます。
◇築30年の対応方法について
意外と見落としがちな設備が「給湯器」です。30年経過すると故障することが増え、この時期に交換することが多いです。
売却する際はそのままでもいいですが、あらかじめ買い手に伝えておくほうがいいでしょう。
給湯器は水回りに比べると修繕費や交換費は安価ですが、故障するとお風呂に入れなくなったり、キッチンで水しか使えなくなるなど、日常的な家事や生活に支障が出ます。復旧にお盆などを挟むと2週間かかってしまうこともあるため、気をつけましょう。
給湯器は交換前であれば販売前に交換費用を見積もり、その分を金額に上乗せしておくといいでしょう。
それから、築30年を超えた建物には「新耐震基準」のものと、そうではない建物があります。新耐震基準は「1981年6月1日」という日付を境目に、建物の診断基準が変更されました。確認をするべきポイントは、建築確認申請を役所に申請した日にちです。建築が完成した日ではないので気をつけましょう。
中古マンションの場合、新耐震基準で建設し建築が完成したのは1981年から1985年と申請から建物完成まで時間がかかっているものが多い傾向があります。これは、当時不動産バブルに沸いていたためディベロッパーが土地のみを先に契約し、建物を遅らせて竣工させていたためです。通常中古不動産の販売図面は建築が完成した日で図面を作っており、築年数だけでは一見わかりづらいです。取引でトラブルが起こりやすい要因の一つですので、あらかじめ確認することをおすすめします。
◇築40年の対応方法について
築40年経過すると、外観の古さが目立つようになります。高く査定してもらいたい場合、「見た目」は価格に反映されるのであらかじめ塗装工事を行うといいでしょう。
加えて、給排水管の故障は取引のトラブルを招きやすい要因です。そのため、交換前であれば見積もりを出しておき、その金額を踏まえに金額を設定しましょう。
あらかじめ見た目を良くしておくと査定金額を決める際、納得して金額を決めることができます。リフォーム費用の見積もりは、安く見積もられた!と感じた場合、査定をした不動産営業に金額を上げてもらうよう交渉するツールとして使うことができます。
リフォーム費用については、大手不動産会社なら社内にリフォーム事業部を設けいていることが多いため、査定と一緒に見積もり依頼をお願いすることができます。
⇒築古の不動産が買値より高く売れた例はどんなことをしていた?
◆「限界マンション」とは?
国土交通省の調査によると、築40年を超える分譲マンションが日本全国に63万戸存在し、それは沖縄県総住宅数60万戸よりも多いなると言います。時間が経過するにつれ築年数の多いマンションは出てきます。
その裏で、老朽化しても修繕積立金不足で直せないマンションが続出しており、それを「限界マンション」と呼びます。
通常、修繕積立金の値上げをする際、マンションの住人が出席する管理組合の総会決議で過半数以上が賛成した場合に承認されます。
もしも、修繕積立金を延滞すると退去しなくてはならないのでしょうか?
答えとしては、支払い義務があるため、管理組合が取り立てを行い、いくら払えと判決が出ますが、その間は預金の差し押さえになるのが一般的です。例えば住んでいる人が高齢者で働いていない年金暮らしの場合、年金は差し押さえはできません。ただし、年金が支払われたら預金になるので差し押さえが可能になります。管理組合が預金を差し押さえすることで、一部を回収する形になります。
また、修繕積立金の未払いが溜まると裁判になる可能性があります。全く支払っていなければ、裁判に負けてしまいます。そして車・宝飾品・マンションなどを強制競売で売られたら、すぐに出ていかなくてはなりません。
強制競売はそう簡単にはいかない場合が多いのですが、支払いをしていないと「区分所有法59条:競売請求」において、マンションの住人の中の迷惑な人(暴力団関係者など)を追い出す方法があります。これを長期間相当な金額を滞納した人の部屋を競売にかけるのです。実例では、2年間150万円を滞納した人に裁判所がこの手続きを認められました。
◆「マンション敷地売却制度」とは?
「マンション敷地売却制度」とは、所有者の5分の4(80%)以上が賛成すれば、マンションを一括で売却できる制度です。建て替えを促すために国が設けました。
これまで、マンションの一括売却には所有者全員の合意が必要で、なかなかマンションを一括売却できずにいました。しかし、老朽化したマンションを建て替えるために「マンション敷地売却制度」を設け、築年数の多いマンションも建て替えを視野に入れることが出来るようになったのです。
もちろん、5分の1以上の賛成を得ることは簡単なことではありませんが、現実的に可能な範囲になったと考えて良いでしょう。こうして、購入者側にも売主側にも大きなメリットとなる制度が誕生しました。
◆まとめ
築年数に応じて、対応や処置が違うことがおわかりいただけたでしょうか。
「住まい選び」は人生の選択の中で大半を占めています。人生のパートナーとの結婚くらい重要です。また、結婚と同じで手に入れるときより手放すときの方が大変なんです。つまり、不動産は購入するときより売るときのが何倍も大変です、売り時は?高く売るためにはどうすれば?本当に売れるの?などなど心配事は尽きません。築年数によって時期を決めたり、比較していくことは最初に行っていただきたいことです。査定時期は、設備の劣化とローン控除や新耐震基準など行政法規の変更を考慮し検討するといいでしょう。
また、売り出し価格は、不動産会社が提案する「3ヶ月以内に販売可能だという査定価格」を元に売却の背景を打ち合わせし決定することをおすすめします。