親族が亡くなられ、突然不動産を相続することになった場合、その不動産はどうすれば良いかと悩まれる方も多いでしょう。
ご自身が同居していてそのまま住むということであれば住居として使用すれば良いですが、すでにマイホームを購入している場合遠方の不動産を相続しても困ってしまいます。
不動産を相続して所有すると固定資産税が掛かりますし、固定資産税もこれまでは土地に住居が建っていれば土地で持つより税金が優遇されていましたが、現在は空き家特別措置法により空き家と認定されると優遇措置がなくなり負担が増える恐れもあります。
又、兄弟、姉妹がいるなど複数で相続する場合なども不動産で相続すると揉める原因にもなります。その為、最近では不動産を現金化して相続するケースが増えています。
そういった状況も踏まえて、今回は相続で手に入れた不動産を売るにはどうすれば良いかについてお話しさせていただきます。
■相続時における不動産を売るケースとは
自分が住まない、賃貸などの活用が難しい不動産を相続した場合に、固定資産税が掛かりますが土地に建物が建っていれば税額が1/6といった優遇措置がありましたが、平成26年11月に施行された空き家対策特別措置法により、空き家と認定されるとその優遇措置がなくなり税負担が6倍になります。更に、不動産は放置すると傷みやすく資産価値の定期化が考えられます。せっかく相続した不動産が負動産になるケースです。
負動産であれば持っておく意味はないので不動産を売る方が良いでしょう。
こういった場合は、不動産業者に売却依頼するケースが多くなります。
又、兄弟がいるなど複数で相続する場合、誰も住まない不動産であれば現金化して不動産を売却する、住んでいる場合は住む人が残りの相続人に対して現金で支払う、又は引越しして売却するというケースが考えられます。しかし、複数で相続する場合は売る、売らないと話がまとまりにくく、よく言われる相続が争続になるケースです。 こういった場合は、相続の話し合いに弁護士や司法書士などが間に入ることが多いです。
弁護士や司法書士が間に入ることで相続人間の話をまとめ、相続した不動産を売却する場合は、売却の委任を受けて処分をするということになります。
■相続した不動産を売る場合に特別な税制度はある?
相続した不動産を売る場合に税金の優遇制度はあるのでしょうか。
通常は、不動産を売却した場合譲渡所得税が掛かりますが、相続した不動産を売却する場合に一定の条件を満たすと3000万円の特別控除を受けることができます。
これを被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例と言います。
近年問題視されております空き家対策の増加を抑制するために平成28年4月施行されたもので、その為相続以降居住者がいない不動産が対象となります。
ではその他どういった条件があるかといいますと
・相続開始直前まで被相続人が居住していたこと
・相続開始直前まで被相続人以外に居住者がいないこと
・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
・相続から譲渡までの間に事業、貸付け又は居住に利用されていないこと
となります。
特例を受けるための適応条件として
・相続の開始があった日から3年目の年の12月31日までに売ること。
・売却代金が1億円以下であること
・売った不動産について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除
など他の特例の適用を受けていないこと
・同一の被相続人から相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと
・親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと
といったものがあり、ややハードルは高い印象はありますが相続した期間が特例の条件に当てはまる場合は一度確認した方が良いでしょう。
では特別控除が適用されることによって譲渡所得税はどれくらい下がるのでしょうか?
特別控除が適用されると、譲渡所得税の計算式は
「売却価格-(取得費+売却時の諸経費)-特別控除3,000万円×譲渡所得税率」
となります。
実際に具体例を挙げると
計算例 具体例 ・昭和54年建築 ・被相続人が1年間所有 ・解体費用200万円 ・譲渡価格1000万円 ・取得費用不明 (※取得費用は不明の場合譲渡価格×5%で計算)
特例が適用された場合の税額 1000万円-(1000万円×5%+200万円)-3,000万円×39%=0円
特例がない場合の税額 {1000万円-(1000万円×5%+200万円)}×39%=292.5万円
特例がある場合とない場合では約290万円もの差となります。
やはり、使えるのであればこの期間のうちに売却しておきたいですね。
■相続した不動産を売る前にしておくこと
では、相続した不動産を実際に売るとなった場合にはどうすれば良いのでしょうか。
まずは、相続した不動産の登記名義を相続人から相続登記によって自分に登記名義の変更(所有権の移転)を行わなければなりません。
特に複数の相続人がいる場合は、相続財産の確定をさせて相続人全員で手続きを行わないといけませんので時間が掛かる場合があります。そうなると売却に時間が掛かったりと新たな争族の火種になることもあります。
相続登記はいつまでにしなければならないという規定はありませんが、登記名義を変更しないと売却ができませんので早めに登記する必要があります。
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■最後に
相続した不動産を売る為には、まず相続した不動産の相続登記をきちんと行う必要があります。単独又は複数で相続する場合によって手続きの時間は変わりますので早めの対応が必要です。
又実際に売る際は、条件によって被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例として譲渡所得に対して3000万円の特別控除を受けることも出来ますので該当するかどうかきちんと確認する必要があります。
不動産を負動産にしない為にも、相続したまま放置せず、売却、賃貸するなど有効に活用することが重要です。