不動産業界は浮き沈みがあり、ほとんどの場合市場の動きに合わせて、繁忙期と閑散期が位置付けられています。不動産の中でも賃貸や売買はほぼ同時期で波があります。では、マンションと一戸建て、どちらも同じ時期と考えて良いのでしょうか?それとも、物件によって売り時は異なるのでしょうか?
今回は「不動産の売却時期」にスポットを当ててみましょう。
◆一般的にいわれる繁忙期・閑散期
一般的に、進学や進級、新生活などで引っ越しが増えるのは2~3月です。また、転職や移動などがある9月も引っ越しが多い時期です。この時期は物件数もあり顧客も多く、市場が潤っている時期だと言えます。つまり、需要と供給のバランスが取れている時期です。
一方、繁忙期以外は非常に暇です。市場に動きがないので、不動産会社も何とかして契約を取りたいと躍起になります。特に冬の寒~い時期、夏の暑~い時期は、検討してくれるお客自体が少ないため、たまにいる検討者は貴重な存在です。
また、経済の状況によっても変動があります。東京オリンピック前後や東日本大震災があったときなど、相場の変動が著しい時期は不動産市場もぐわんぐわんと大きく変動しています。
そういった日本経済の各事項も織り交ぜながら、複雑に絡み合って変動していくのが不動産の市場だと覚えておきましょう。
そして、忘れてはならないのが物件の「築年数」と「季節」と「税金」になります。それぞれに最適な時期があります。キーワードは「25年」です。例えば、住宅ローンの取得日から25年というのは一つの分岐点になっています。取得日から25年以内は住宅ローンの控除が適用されるためです。築年数20年前後の物件を売るときや買うときは、そういった背景もみておくと良いでしょう。
◆マンション・一戸建てそれぞれの『売り時』は?
上記で紹介した不動産業界の常識をふまえながら、マンション・一戸建てそれぞれの『売り時』を見ていきましょう。
◇マンションの売り時
結論からいうと、マンションの売り時は紅葉シーズン目前の9月ごろです。この時期は、主に個人用の居住物件の動きが活発化しやすいとされています。また、資金繰りの事情も関係しています。不動産の購入には、購入にかかる費用以外にも引っ越し費用、新しい家具・家電の購入費用、その他諸経費がかかります。そのため、当初予定していた資金繰りをオーバーしてしまうなんてことも…一番市場が動くのが2~3月ですから、その時期に引っ越すとなれば引っ越し料金は高騰し割高になってしまいます。できればその前の秋ごろ、余裕を持って9月ごろには引っ越しを済ませておきたいという心理になります。トータル的に考えて、繁忙期を避けることが出来て諸費用を抑えられる丁度9月ごろがベターなのです。
また、秋に活発になる不動産市場の動きは「企業の決算期」も関係しています。日本のほとんどの企業が3月決算で、決算前は各社売上のためにがんばります。この時期は企業が燃える「戦いの時期」です。企業同士が争い、多少サービスしてでも自社と契約してもらえるようがんばります。この流れに煽られるのは不動産会社だけでなく金融機関も同じです。住宅ローンの低金利化が加速する中、金融機関もしのぎを削って顧客獲得に努めています。そのため、年度が替わる春ではなく、決算前の冬に奮闘するのです。不動産は売り始めてから実際に引き渡しが完了するまで、3~5か月程度はかかってしまいます。つまり、その期間を逆算しておかなければならないのです。売買契約にかかる期間でいかにスタートダッシュし、年末~年度末頃までに引き渡しを終えられるかが、競合と差をつけられるポイントになります。不動産の周囲を取り巻く住宅ローンの金融機関、家具・家電の購入の販売機関など、好条件となるのが秋ごろなのです。この良い波を逃すと双方が損失になるのは目に見えています。
以上の点から、マンションの売買で最適なのは9月ごろをスタートし、「10月~1月下旬まで」を目安にすると良いと思います。この期間を物件の最終引き渡しを含めた期間の目安にすると良いでしょう。最終引き渡しとは、契約を済ませ引っ越しを終えて鍵を渡すまでのことです。売主側は鍵を相手に渡すまで、買主側は住宅ローンも実行されて返済が始まる期間のことを指します。
【マンションの売り時は秋】
・2~3月は引っ越し資金など諸費用もかさむため、繁忙期は避けたい
・企業の決算が3月なので、それに向けて市場が活発になる
・売り始め~引き渡しまで3~5か月はかかるため、逆算すると9月ごろスタートが最適
・売り始めは9月~、契約完了は10月~1月下旬が目安
◇一戸建ての売り時
続いて一戸建ての売却時期でおすすめなのは、年明け(1月~3月)です。この時期は4月の進学や就職などに向けて人が多く異動する時期です。賃貸はもちろん売買契約の動きも活発になります。しかし、理由はそれだけではありません。
この時期に不動産を購入しようと多くの人が考えて点にあります。住居用としての購入希望者はもちろん投資家の需要もこの時期に一気に高まります。投資用としては、賃貸アパート・マンション1棟よりも一戸建てへの投資がリスクも低く始めやすいためです。そのため、一戸建てを所有している方は居住用と投資用どちらにもアプローチが出来るわけです。
そのための戦略としては、投資用であればシェアハウスとしての賃貸で収益が得られることをアピールしても販売促進に繋がるでしょう。大切なのは、単に居住用として売り出すだけではなく、投資用として収益に繋がる物件であることを伝えられるかです。
新しい年度に向けての時期だからこそ、居住用・投資用どちらにも対応できる物件は強味になります。不動産会社と相談の上、販促活動に役立ててください。
【一戸建ての売り時は年明け1~3月】
・進学・就職などの新生活をスタートする人に向けられる
・投資家の需要も高まるため、居住用だけでなく投資用としてアピールできる
・投資物件としてシェアハウスも人気が高く、賃貸による収益が見込めることをアピール
◆まとめ|一番の「売り時」は『売りたいとき』
いかがでしたでしょうか。
マンション・一戸建てそれぞれの特徴をみながら、売却時期を考えると思いますが、それぞれに最適な『売り時』は多少なりとも違うということがおわかりいただけたでしょうか。
それぞれの『売り時』そして理由は下記の通りです。
【マンションの売り時は秋】
☑2~3月は引っ越し資金など諸費用もかさむため、繁忙期は避けたい
☑企業の決算が3月なので、それに向けて市場が活発になる
☑売り始め~引き渡しまで3~5か月はかかるため、逆算すると9月ごろスタートが最適
☑売り始めは9月~、契約完了は10月~1月下旬が目安
【一戸建ての売り時は年明け1~3月】
☑進学・就職などの新生活をスタートする人に向けられる
☑投資家の需要も高まるため、居住用だけでなく投資用としてアピールできる
☑投資物件としてシェアハウスも人気が高く、賃貸による収益が見込めることをアピール
【共通する部分】
☑不動産業界を取り巻く市場の動きが活発になるのは2~3月、9月
☑「築年数」と「季節」と「税金」も参考に
☑オリンピックや災害などの情勢もチェック
そして、最も決定的な「売り時」は『売りたいとき』です。
物件の特徴や市場の動きなどを見た上で、「売りたい」と思ったときが一番の売り時です。