不動産は市況によって相場が大きく変動します。
また、自分の物件を売却するときに、査定を不動産会社に依頼しますが、その査定額もバラバラであることが多いです。
そのため、不動産相場はある程度自分で調べ、不動産会社の提示する査定額を判断する必要があります。今回は、そんな不動産相場の調べ方を解説します。
1.周辺事例比較法
不動産相場を調べる最も簡単な方法は、周辺事例比較法を利用することです。
周辺事例比較法とは、周辺で実際に成約した事例を基に相場価格を算出する方法です。
なぜ、周辺事例比較法が良いかというと、不動産相場は基本的には実際に成約した金額で成り立っているからです。
つまり、周辺の物件が実際にいくらで売却されたかは、そのままエリアの相場価格になります。
逆にいうと、不動産の全体市況というよりは、そのエリアの需要と供給のバランスによって相場価格は決まるということです。
たとえば、あるエリアにマンションが1戸売り出されていたとします。
そのエリアは人気エリアであり、マンション購入検討者が100人いたとします。そうなれば、仮に相場価格が3,000万円のエリアでも、「3,500万円でも良いから欲しい」という人もいるかもしれません。
つまり、供給よりも需要が多ければ相場価格は上がりやすいということです。
一方、そのエリアに50戸のマンションが売り出されていたとします。その時に購入検討者が100人だと、先ほどの1戸売り出していたときよりも価格は安くなる傾向になります。このように、そのエリアの需給バランによって相場価格は変動するので、「実際に成約した金額」が大切になってくるのです。
1-1.周辺事例比較法① REINS(レインズ)
周辺事例を調べる方法の一つは「REINS Market Information」というサイトを利用することです。このサイトはREINSのデータを基にしているサイトなので、正確かつ事例が豊富です。REINSとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称で、基本的には不動産会社しか閲覧できないネットワークシステムになります。
このREINSというネットワークシステムは、過去の成約事例や、今売り出している物件情報が記載されています。不動産会社が「専任媒介契約」か「専属専任契約」を締結したときは、REINSへの物件掲載は義務になっています。そのため、世の中で売り出されている物件情報の多くはREINSに登録されているのです。REINS Market Informationの利用方法は以下の通りです。
①物件種別「マンションか一戸建てか」を選択
⇓
②沿線や駅などの詳細情報を絞り込む
⇓
③データを抽出して調べたい物件と近い条件の物件をピックアップ
注意点は「エリアが広い」という点です。たとえば、埼玉県の物件を検索するときには、「埼玉県中央部・埼玉県東部・埼玉県西部」などのエリア分けになっています。
そのため、「3.データを抽出して調べたい物件と近い条件の物件をピックアップ」を行った後は、エクセルなどにデータとして落としたほうが良いです。その上で自分の調べたいエリアや最寄り駅を絞り込んで、エリアの相場を調べます。
1-2.周辺事例比較法② 土地総合情報システム
REINS Market Information以外の方法だと「土地総合情報システム」というサイトを利用しても相場価格は調べられます。このサイトはREINS Market Informationと似ており、各エリアの成約事例のデータがあります。調べる方法も前項のREINS Market Informationと同様ですが、以下の点が異なる点です。
①物件を地図上から検索できる
②データの情報源
上記①に関しては、土地総合情報システムのメリットです。
地図上から物件を選べるので、REINS Market Informationよりも物件を選びやすいです。
一方、上記②に関しては土地総合情報システムのデメリットになります。
土地総合情報システムの情報源は、一般消費者の情報になります。一般消費者にアンケートを依頼して、そのアンケート結果をデータとして蓄積します。
そのため、不動産会社が情報源であるREINS Market Informationよりは物件数と精度は落ちてしまいます。
1-3.検索のコツ
REINS Market Informationも土地総合情報システムでも、検索のコツは共通しています。以下のような優先順位で物件を絞り込むことです。
①最寄り駅
②最寄り駅距離
③広さ
④築年数
できれば、10数物件程度まで物件を絞り込みましょう。10数物件まで物件を絞り込めたら、必ず単価に戻します。単価とは㎡(もしくは「坪」)単価のことです。
たとえば、3,000万円70㎡の物件は、㎡単価42.8万円(3,000万円÷70㎡)になります。全て㎡単価に戻すことによって、そのエリアの「単価」の相場価格が分かります。単価の相場価格が分かれば、後は、自分の物件の広さに落とし込むだけです。
1-4.物件の種類別でみる
売買する不動産の種類別によって、適正な価格を知る方法が少し異なります。また、相場を知る上でみる取引事例やその他の価格情報は簡単に手に入りません。そこで、容易に比較できる価格情報サイトなどから紹介していきます。
物件種別 | 価格情報 | 実施機関 | 内容 |
---|---|---|---|
土地 | 地価公示 | 国土交通省 | 公的機関が評価した価格 |
不動産価格指数(住宅) | 不動産購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報を基に物件の立地や特性による影響を除去して指数化したもの | ||
土地総合情報システム | 不動産の購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報 | ||
地価調査 | 都道府県 | 公的機関が評価した価格 | |
新築マンション | インターネット広告等 販売中の物件の売り出し価格情報 | ||
中古マンション | インターネット広告等 | 販売中の物件の売り出し価格情報 | |
レインズ | 指定流通機構 | 宅地建物取引業法に基づいて収集した実際の取引価格情報 | |
不動産価格指数(住宅) | 国土交通省 | 不動産の購入者へのアンケート調査で把握した実際の取引価格情報を基に物件の立地や特性による影響を除去して指数化したもの | |
一戸建て (新築・中古) |
インターネット広告等 | 販売中の物件の売り出し価格情報 | |
レインズ | 指定流通機構 | 宅地建物取引業法に基づいて収集した実際の取引価格情報 |
2.売り出し価格を調べる
周辺事例を比較した後は、売り出し価格を調べましょう。さきほど調べた「成約事例」はあくまで、実際に成約した価格です。成約事例を調べることによって、「恐らくこの程度の金額で売却できるであろう」ということが分かります。
しかし、実際に売り出し価格を調べることによって、競合物件がどの程度の価格で広告に記載しているかが分かります。広告への記載価格が分かれば、「売り出し価格の相場」が分かり、自分の物件の売り出し価格を設定しやすいのです。
2-1売り出し価格の調べ方
売り出し価格の調べ方は簡単で、主にネット上からの情報を集めることです。
たとえば、SUUMOやHOMESなどの不動産ポータルサイトを見てみましょう。自分の物件と最寄り駅や広さなどの条件が近い物件を絞り込み、その物件が「いくら」で売り出されているかを調べます。
また、自分の家に投函されてきたチラシもストックしておきましょう。不動産ポータルサイトへ掲載するには費用がかかります。その費用を支払っていない物件は、チラシなどの紙媒体をメインに広告をしていることもあるのです。つまり、チラシでしか売り出し価格を知ることが出来ない物件もあるということです。
2-2売り出し価格の利用方法
先ほどいったように、売り出し価格を調べることによって自分の物件をいくらで売り出すかを設定しやすいです。
たとえば、高く売ることよりも「早く売ること」を優先していた場合、周辺の売り出し相場価格より低い金額で売り出す必要があります。仮に、周辺の売り出し相場価格が3,500万円であれば、3,398万円などで売り出せば集客が延び成約率も上がります。
一方、早く売ることよりも「高く売ること」を優先する場合はその逆です。売り出し相場価格が3,500万円であれば、3,698万円など「ギリギリ集客できるレベル」で価格設定をするのです。このように、売り出し相場価格を調べれば、売り出し価格をいくらに設定すれば良いかが分かります。
3.「一物四価(いちぶつよんか,いちぶつしか)」でみる
少し聞きなれない言葉ですが、意味を知ったらとてもわかりやすいものへと変わるはずです。
「一物四価」の意味は、「1つの物には4つの価格がある」というものです。
上記と被る内容もありますが、覚えやすいのでなんとなくでも頭に入れておきましょう。
不動産は大きくわけて下記の4つの価格があり、それらを相場を出すときに応用できそうなので紹介します。
1.実勢価格
2.公示価格・基準地価
3.路線価
4.固定資産税価格
それぞれ意味合いが異なります。下記で簡単に紹介していきます。
3-1実勢価格
実勢価格とは、一般に販売されたときの販売価格のことを指しています。変化した単語として「エンドユーザー価格」などとも呼びます。実際に取引された価格というわけですね。この価格で買主は購入した、という一つの目安になります。不動産業界用語ではアッパー,エンド値などと呼びます。
3-2公示価格・基準地価
公的に提示された価格、つまり毎年国や自治体が発表した価格です。「これが基準になるよ~」と正式に発表しているものです。これが割り出されるためには、前年の取引事例を集め、参考になる土地の基準を取引価格DATEとして発表します。つまり、この基準が出されるまでに様々な比較がされたことによって、よりエンド値(実勢価格)に近づけることができます。参考程度にはなります。公示価格(基準地価)は、実勢価格の約80~90%と言われています。これに少し上乗せして、販売するというイメージです。
3-3路線価
路線価は、国税庁が発表する価格です。これは相続税を対象にした路線価を表しています。またこれは2種類あり、もう一つが「固定資産税路線価」というものです。しかし、これは後で紹介する「固定資産税価格」を見るのであまり役には立っていません。似ていますが微妙に違い、ほとんど役に立たない路線価もあるのです。
そしてこの路線価、借地権割合などに記載されています。これは特に業者さんにとっては大切な指標なんです。業者さんが仕入れ価格として見合う価格になっています。路線価は、実勢価格の約70%ほどです。
つまり、路線価(70%)が仕入れ値だとすると、実勢価格(100%)で売ることが出来れば粗利(30%)が儲かる計算となります。この路線価が業者にとって仕入れ値なので、物差しになっているというわけです。
3-4固定資産税価格
先ほどチラッと出てきた「固定資産税価格」。これは、別名「固定資産税評価額」といいます。「固定資産税路線価」とさらに紛らわしいですが、内容がだいぶ異なるのでしっかり区別しておきましょう。
これは主に固定資産税・都市計画税の算出に利用するものです。不動産の売買において、物件の引き渡し日を基準に日割り計算をし、固定資産税を算出します。このときに利用するものです。購入するときは毎年の固定資産税も簡単に計算できるので、具体的な金額が知りたい場合は担当の方に聞くのが良いでしょう。
このように、一つの不動産には4つの価格帯があります。相場を出すときの参考にしてみてください。
4.まとめ
不動産の相場価格は、基本的には周辺事例から算出されます。
その周辺事例も不動産会社だけでなく、自分で調べることができるのです。できれば、不動産相場は不動産会社に査定依頼する前に把握しておきましょう。不動産相場を事前に把握していれば、不動産会社の査定額の「精度」も判断しやすいです。
また、同時に売り出し価格も調べておけば、不動産会社が売り出し価格を提案したときにも「精度」が判断できます。その精度を判断する力が「優良不動産会社」を見極める力につながります。