不動産を売却するときには、その不動産が「山」である場合もあります。山は、不動産用語では「山林」という表現をします。この山林を売るときは、ほかの不動産とは異なる点がモロモロあるので注意しましょう。今回は、そんな山林の売却方法を解説します。
1.山林を売却する方法
結論からいうと、山林を売却する方法は通常の不動産を売却する方法とベースは変わりません。ベースというのは、不動産会社に仲介を依頼して購入者を探してもらうということです。
ただ、山林という、不動産の中でも特殊な種類の不動産売却になるため、ほかの不動産売却と違う部分が多いのも事実です。また、どういった点が特殊か、詳しい紹介をしていきます。不動産として扱う「山」の特徴は下記のようになっています。
・測量が難しく、正確な数値がわかりにくい
・ほとんどの不動産業者が対応してくれない
・相場がない
◇測量が難しく、正確な数値がわかりにくい
山の公簿面積は、登記簿内で設定された広さを表しています。これは、山を調査して計測した広さではなく、ざっくりはじき出されたものなのです。正確な広さを知ろうとすれば莫大なお金がかかります。それほどの莫大な費用をかけてまで測るものでもなく費用対効果がないので、売却のためだけに測る必要はないでしょう。
それによって、公簿面積で査定額を出され価値をつけられます。しかし公簿面積は実際の面責よりも小さいことが多く、本来の価値を正確に把握することが出来ないのです。安く見積もられることが多いと思っておいてください。
山はあまりにも大きいので、正確な面積や本来の価値はあまり期待してはいけません。
◇ほとんどの不動産業者が対応してくれない
山は買い手がほとんどありません。そのため、扱っている不動産も限られてきます。なんのために購入するかなどの目的も限られているので、当然でしょう。
不動産業者がいくらがんばっても、1円にもならないことの方が多いのです。
手間も時間もかかるのに儲けがないという不動産泣かせのものなのです。多くの不動産業者が対応してくれないことはわかっておきましょう。山の売却をしてくれる業者を見つけるのは至難の業です。
◇相場がない
通常の不動産査定は過去の取引などから算出されます。しかし、山の売却が盛んにおこなわれていないことには取引の事例から導き出すことが難しいのです。
相場がほとんどないようなものなのです。相場を出すことは諦め、山を売却する方法を考えた方が早いです。
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そこでまずは、山林を売却する2つの方法を知っておきましょう。
1-1山林をそのまま売却する
山林を売却する1つ目の方法は、山林を丸ごと売却する方法です。この方法が、山林を売る1番メジャーな方法です。通常の不動産は「周辺環境」や「築年数」「室内状況」で査定額は変わりますが、山林を丸ごと売却する際には、以下の点から評価されます。
・山林に茂る木の品質
・山林の樹種や樹齢
・間伐(山林の手入れ)の有無
・道路状況など
上記のような「山林の調査」に関しては専門の業者が行いますので、自分で調べる必要はありません。一般的な流れとしては、不動産会社に仲介を依頼して、その不動産会社が上記のような調査をしてくれる業者を選定するという流れです。
山林をそのまま売却するときには、家を売却するときと同じで、山林の所有権が購入者に変わります。そのため、その時点で自分の手から山林は離れていきます。
1-2木を売却する
前項の山林をそのまま売却する方法がメジャーですが、山林の「木」だけ売却するという方法もあります。これが、山林を売却する2つ目の方法になります。この場合は、不動産売買というよりは「林業」に性質は近くになります。
林業とは、家や家具など、木材を必要としている業者へ木を販売するということです。そのため、専門的な知識やノウハウ、流通経路の確保などが必要であるため、「事業」として行う覚悟がない限りはオススメしません。木だけを売却する場合には所有権が自分のままになっているので、固定資産税の支払いや管理は自分で行います。
1-3売却を依頼する業者
山林の売却を依頼するときには、通常の不動産と同じく一括査定などで査定をします。ただし、エリアによっては「該当する不動産会社なし」となる場合もあります。そのため、山林近くの不動産会社や全国森林組合連合会※1に相談するという方法もあります。
注意点は、ほかの不動産以上に、不動産会社探しは時間をかけるという点です。なぜなら、上述したように、山林を売却するときには専門の業者への依頼があり、そもそも山林という特殊な不動産の売却であるからです。
ある程度のノウハウがないと、山林売却がいつまで経っても進まないという事態もあり得ます。そのため、不動産会社選びは時間をかけて、ノウハウのある優良会社を選びましょう。
※1:全国森林組合連合会
2.山林売却での注意点
前項で、大まかな山林売却の流れが分かったところで、山林売却時の注意点を解説します。注意点は以下の通りです。
・境界確定に時間がかかる
・調査費がかかる
2-1境界確定に時間がかかる
通常の不動産であれば石や金属で境界杭が打たれています。その境界杭を基に土地の範囲が決まり、地積測量図として資料に残されているので、土地の広さの証明はできます。しかし、山林は境界が定まっていないことが多いです。
そのため、山林の隣地の土地の持ち主の立ち合いのもとで、境界確定を行う必要があります。境界確定を行うには、以下のような作業が必要になります。
・隣地の所有者の特定
・隣地の所有者への連絡および立ち合い日の決定
そもそも、相続案件などで隣地の所有者を知らない場合には、まず所有者の情報を謄本から起こすという作業が必要です。また、所有者と連絡を取り、測量をして境界立ち合いをするという作業があるため、通常の境界確定よりも時間がかかります。
⇒土地込みの不動産を売却する際、測量は必須なのか?測量の重要を検証する
2-2調査費がかかる
山林を売却するときには、以下のような費用がかかります。
・仲介手数料
・登記関係費用
・測量費用
・調査費用
仲介手数料と登記関係費用は、通常の不動産売却時と同様です。買主を仲介してくれた不動産会社に手数料を支払い、抵当権が設定されていれば抹消する費用がかかります。
その上で、測量費や調査費がかかります。測量費は前項で話した「境界確定」のための費用です。測量費用の相場は60万円~80万円(登記する前提)ですが、山林は広いので100万円を超すことも珍しくありません。
また、上述したような調査費用も範囲や業者によりますが、数十万円から場合によっては百万円以上かかる場合もあります。いずれにしろ、諸費用は通常の不動産売却時よりも高い金額になる点は注意しましょう。
3.まとめ
山林売却のときは以下の点を認識しておきましょう。
・山林をそのまま売る方法と木だけを売る方法がある
・特殊な不動産のためノウハウのある不動産会社選びが必須
・境界確定には時間と手間がかかる
・諸費用は通常の不動産売却よりも高額