住宅の広告の中で、時折「借地権付き住宅」という物件があるのを目にするかもしれません。
建物は自己所有だが土地だけ借りている状態で、そんな住宅も売ることができます。
ただし、完全所有の物件と比べると売りにくいのもまた事実ですので、今回は借地権付き住宅を売る際のポイントなどを紹介します。
■借地権は「土地を借りている人が建物を建てる権利」
まずは「借地権」とは何かを見ていきましょう。
「借地権」は地主さんが持っている権利だと思っている人も多いですが、実際には土地を借りている人が持っている権利です。
借地権を定めている法律に「借地借家法」があり、それによると以下のように規定されています。
「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」
つまり、「地主さんの土地を借りて、土地を借りた人はその土地に自己所有の建物を建てられる権利」ということですね。
借地権は地主さんが持っているものだとばかり誤解している人が多いですが、厳密に言うと借地権を持っているのは「土地を借りている人」なのです。
土地を借りる対価として、お金を借りている人は地主さんに「地代」を払っています。
■借地権付き住宅はかなりお得!
不動産情報などでよく見る「借地権付き住宅」(定期借地権付マンションも)、実はかなりお得な物件です。
借地権付き住宅は、建物部分は自己所有となりますが、建物が建っている土地は地主さんからの借地という物件です。
分譲住宅などの価格には、建物代と土地取得費用の合計金額となっていますが、借地権付き住宅は建物代だけで土地取得費用は発生しません。
また、土地取得税や都市計画税、固定資産税を支払う必要もありません。
ただし、地主さんに支払う「地代」は別途発生します。
建物部分は自己所有なので、リフォームをしてもDIYに勤しんでも構いません。
それでいて、実際に暮らしてみると土地と家をセットで購入するのと暮らしぶりは変わらないので、かなりお得物件と言えるでしょう。
■借地権付き住宅の資産価値は低い
借地権付き住宅はお得な物件ゆえ、不動産会社でも比較的注目の物件です。
買うときはお得な借地権付き住宅ですが、いざ売ろうとなるとその資産価値は決して高くありません。
本来の土地の価格が100万円とすると、地域や土地によって異なりますが概ね5割~6割の借地権割合となり、借地権の財産評価は60万円となります。
また、土地と家がセットになった物件と比べると、以下のような制約やデメリットがあるのも資産価値が低い理由として挙げられます。
・建物の名義変更をすると各種手数料がかかる
・土地の価格が含まれていないので売却時には安くなりがち
・増改築をするには地主の承諾が必要
借地権付き住宅の耐用年数を延ばすべくリフォームをしようとすると、地主さんが許可をしない場合があります。
これは、契約期間を満了したら更地にして返還しなければならないからであり、更地の意志に逆らうようなリフォームは、許可されないことが多いです。
以上のような制約やデメリットがあるため、資産価値として考えたとき、借地権付き住宅は相対的に低めです。
□借地権の又貸しは原則としてできない
土地も建物も使っていないので、売りにくいなら借地権を他の人に又貸ししようと考える人もいるようですが、又貸しは原則としてできません。
ただし、地主さんの許可があれば話は別ですし、建物だけを貸す分には問題ありません。
□借地権付き住宅を売る際には、まずは地主に相談を
そんな借地権付き住宅を売る際には、何よりも地主さんの許可を得なければなりません。
借地権自体は借りている人の権利ですが、土地自体の権利は地主さんが持っています。
借地権付き住宅を売る際には、地主さんに相談をしてその意向を確認して、許可を出さない限りは話が進みません。
■地上権は資産価値が比較的高い
ただし、「地上権」のある物件については、資産価値は比較的高いです。
これまで説明してきた借地権付き住宅は、「賃借権」の方を指します。
借地権には賃借権以外にも「地上権」というものに分けられ、少数ながら「地上権付き住宅」もあります。
賃借権と地上権の違いを、以下の表にまとめました。
地上権 | 賃借権 | |
権利 | 物権(財産権) | 債権 |
登記 | される(地主に登記義務がある) | 原則されない |
譲渡 | 地主の承諾はいらない | 地主の承諾が必要 |
地代 | かからない場合も | かかる |
抵当権 | 地上権そのものに設定 | 建物のみに設定 |
地上権で特に注目すべきは、譲渡に際して地主の承諾が必要ないことでしょう。
耐用年数を延ばすためのリフォームを行なう際にも、地主の許可なく行えます。
賃借権よりも、権利として借りている人寄りになっているのが地上権ともいえます。
■土地と借地権をセットで売却できるよう地主と相談するのもあり
借地権を高く売るベストの方法は、土地と借地権をセットにして、完全な自己所有物件とすることです。
借地権付き住宅は確かにお買い得物件ともいえますが、売るときには本来の資産価値よりも下がってしまいます。
そのあおりをもろに食らってしまうのが土地部分です。
借地権付き住宅の土地部分の資産価値は、「土地」と「借地権」に分かれてます。
本来その土地が持つ価値が1億円だとしても、土地と借地権をバラバラに販売すると、楚合計してもその半分5,000万円くらいの価値にしかなりません。
売却の際は、土地と借地権をセットにして売却し、「完全所有権」としたほうがより本来の資産価値に近づくでしょう。
売却価格を権利の割合で按配すれば、より多い売却益を得られます。
■借地権付き住宅の売却は、不動産会社を活用しよう
借地権付き住宅を売る際に、地主さんと借地権者だけで解決しようとすると、トラブルとなる可能性もあります。
裁判沙汰になれば時間も費用も掛かってしまいますので、両者の仲介役として不動産会社に入ってもらうのがいいでしょう。
借地権者側の依頼があれば、不動産会社が仲介役となって地主さんとの交渉を行なうだけでなく、新たな提案もしてくれます。