不動産を所有していると、必ず「固定資産税」という税金がかかってきます。固定資産税の税額は不動産の価値によりますが、価値の高い不動産であれば数十万円~百万円を超す場合もあります。
そのため、「固定資産税が支払えない」という状況もあり得るのです。今回は、そんな固定資産税が支払えないときにはどうするか?について詳しく解説します。
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1.固定資産税を滞納するするとどうなるか?
まず、固定資産税を支払えず、滞納した場合にはどうなるかという話です。結論からいうと、固定資産税を一定期間滞納すると、借金と同じく自分の財産が差し押さえられます。預金や給与などを差し押さえられ、滞納した固定資産税の支払いに充てられるということです。
そして、それでも固定資産税を支払えないときは、不動産は「公売」されます。公売とは、官公庁が主導で不動産を売却することで、固定資産税滞納から5年以内を目途に公売にかけられます。なぜ「5年以内」かというと、税金滞納の時効が5年以内なので、それより前に売却するというワケです。
公売は競売と同様、相場価格より低い金額で取引されます。もちろん、その売却益で住宅ローンが返済できなければ、任意売却になったり、最悪の場合には自己破産になったりします。そのため、公売になる前に不動産を売却するのが理想です。
1-1差し押さえの対象となる財産
・給与
・年金
・退職金
・不動産
・有価証券
・車
・宝石
・ゴルフ会員権
・電話加入権
など金銭的価値があるものです。金銭的価値があるとなるとすべて対象になります。
1-2差し押さえの対象にならない財産(差押禁止財産)
・生活保護費
・家財道具
・衣類
・3ヵ月分の食料や燃料
・児童手当
・仕事などで必要となる道具
など。
1-3延滞金が発生する
固定資産税を払わないでいると、差し押さえが発生します。その間、延滞金はあるのかというと、もちろんあります。また、延滞金は1ヶ月を過ぎるとグンと高くなります。
割合は下記のようになっています。
【固定資産税の延滞金の利率の推移】
納期限1ヶ月後以内 | 納期限後1ヶ月以降 | |
平成20年1月1日~平成20年12月31日まで | 年4.7% | 年14.6% |
平成21年1月1日~平成21年12月31日まで | 年4.5% | 年14.6% |
平成22年1月1日~平成25年12月31日まで | 年4.3% | 年14.6% |
平成26年1月1日~平成26年12月31日まで | 年2.9% | 年9.2% |
平成27年1月1日~平成28年12月31日まで | 年2.8% | 年9.1% |
平成28年1月1日~平成28年12月31日まで | 年2.8% | 年9.1% |
延滞金が上乗せされる形になるので、さらに負担がかかります。支払いが難しい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
2.固定資産税が支払えないときの対処法
固定資産税が支払えないときには、以下の点を知っておきましょう。
・公売までの流れ
・通常の分納
・納税の猶予
・換価の猶予
2-1公売までの流れ
固定資産税滞納時の対処法の前に、そもそも公売になる流れを知っておきましょう。公売になるときは、以下のような流れになります。
・滞納発生
・職員が催促状を発送
・財産調査
・財産の差し押さえ
・公売
固定資産税は、毎年6月頃に郵送で納付書が送られてきます。1年分を一括で支払っても良いですし、4回に分けて支払っても良いです。いずれにしろ、それぞれ納付期限が定めてあるので、その期限を過ぎれば滞納になります。
滞納する前に自分から役所に相談しない限り、役所の職員から催促状が送られます。郵送日の目安としては、税金の納付期限から20日滞納した頃の発送です。
法律上は、催促状発送から10日以内に滞納を解消しないと、「財産を差し押さえできる」と決まっています。そのため、仮に催促状が届いても滞納分が支払えないのであれば、その旨を必ず役所に相談しましょう。
それでも催促状を無視すると、財産調査をされ、財産がある場合には差し押さえられます。もちろん、その財産の中には「不動産」も含まれるので、差し押さえれたら公売という流れになります。
2-2通常の分納
固定資産税滞納時の対処法として最も一般的な方法が、滞納分を分納するという方法です。分納の概要は以下の通りです。
・所定の期日までに固定資産税を分納する
・手続きがシンプル
・延滞税の免除はない
ここでいう分納とは、単純に1年以内の期限を決めて、再度固定資産税を分割で支払うことです。簡単いうと、「手持ち金がなく滞納してしまったけど、今日からきちんと計画を立てて分割して支払います」ということです。
この手続きは、役所に電話をしたり相談しに行ったりするだけで良いので、手続き自体はシンプルです。ただし、全ての税金に適用される「延滞税」は発生します。
2-3納税の猶予
固定資産税滞納時の対処法2つ目は納税を猶予してもらうことです。納税の猶予は、簡単にいうと「延滞税を50%~100%免除してもらい、計画通り分納できなくても『弁明』できる」という支払い方法です。
前項で解説した通常の分納とは、「延滞税の免除がある」「弁明できる」という点が異なりますが、手続きが面倒で複雑になってきます。
また、納税の猶予が与えられるのは以下のような状況のみです。
・災害や盗難被害に遭った
・病気やケガをした
・事業を廃止または休止した
・事業で大きな損失が発生した
さらに厳密にいうと、
払えない理由 | 延滞税の免除率 |
災害や盗難に実際に遭った | 100% |
本人もしくは家族が病気やケガをしてしまった | |
事業で大きな損失を受けた | |
事業が廃止・休止した | |
災害・盗難・病気・ケガに類似することが起きた | 50% |
事業の廃止・休止・著しい損害に類似することが起きた |
つまり、何か特別な事情がない限りは、納税の猶予は受けられないということです。そうなると、必然的に前項の「通常の分納」になります。また、こうした状況になっているという場合は真摯に説明しなければなりません。手続き自体が比較的面倒なので、耐性が求められるでしょう。
2-4換価の猶予
固定資産税滞納時の対処法3つ目は、換価の猶予をしてもらうことです。換価の猶予は、前項の「納税の猶予」に該当せず、既に財産を差し押さえられてしまっている人が利用します。
それは下記の条件に当てはまる人です。この条件に当てはまると「換価の猶予」つまり減免できる可能性があります。
・生活保護受給者が所有している固定資産
・公益のために利用されている固定資産(自治会集会所など)
・火災や水害などで価値が低下した固定資産
また、換価の猶予の概要は以下の通りです。
・延滞税を50%免除できる
・財産の換価(売却)を一時的に先延ばせる
つまり、差し押さえられている不動産が強制的に公売にかけられそうなとき、その公売にストップをかけられるということです。仮に、換価の猶予が認められれば、公売を1年~2年程度先延ばすことができ、その間に滞納した固定資産税を支払えば良いということです。
ただ、その不動産を売却されてしまうと生活が苦しくなってしまうと認めらないと、換価の猶予は適用されません。そのため、換価の猶予が適用されるのは厳しいと言えます。
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3.まとめ
このように、固定資産税が支払えないと、基本的には不動産は公売にかけられ、相場価格よりも安価で売られてしまいます。官公庁主導での売却になり売主の意志は反映されないため、かなり安い金額で売却されてしまうこともあります。
ただし、「分納」「納税の猶予」「換価の猶予」という3つの対処法があることは覚えておきましょう。通常の分納で対応できれば楽ですが、何か特別な事情がある限りは、ほかの2つの対処法も検討するべきです。いずにしろ、公売になる前に不動産は売却した方が良いです。