不動産を売却するときには、一般的には不動産屋さんに仲介を依頼します。しかし、仲介を依頼すると仲介手数料がかかるので、不動産屋を通さずに自分で取引をしたいという方もいます。
ただ、不動産は専門的な知識も必要になるため、不動産屋を通さないで取引する「リスク」もあるのです。
今回は、不動産屋を通さずに取引する方法やリスクについて解説します。
1.不動産屋を通さず取引できるのか?
結論からいうと、「商売」にしなければ、不動産屋を通さずに自分で家を売却することは可能です。商売にしないとは、以下のような点を満たしている必要があります。下記2点を満たしていれば「宅建業」の取引に当たらないのです。
①自らが所有する売買の対象物が宅地(土地や建物)である
②反復して売買を行うワケではない
つまり、他人の所有している不動産の売却だったり、繰り返し売却を行なったりする場合には、自分で取引をすることはできません。このような場合には宅地建物取引免許(宅建免許)を所有した、不動産屋に仲介を依頼する必要があるのです。
2.不動産屋を通さず行う取引
不動産屋さんを通さずに取引をするとなると、具体的には以下のようなことを行います。
①集客活動:広告をして、買主をさがす
②物件調査:測量、間取りや不具合の確認など
③書類作成:申込書や契約書
④登記関係:司法書士の斡旋や金融機関とのやり取り
⑤瑕疵担保責任:期間や範囲など
⑥購入者の資金計画の確認
上記のようなことを自分自身で行うため、非常に面倒で煩雑な手続きになるのです。
2-1集客活動
まず、第三者に売却する場合には、集客活動をしなければいけません。チラシを投下するにしても、「デザイン」「印刷」「投函作業」などの手配を自分でします。また、SUUMOやHOMESなどの不動産ポータルサイトへの登録は法人しかできません。
また、レインズ※1への登録も宅建免許を持っている不動産会社しかできません。つまり、不動産屋さんに売却を依頼するときよりも、集客力は大きく落ちるというワケです。
※1レインズとは、Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称です。不動産会社が「今売却している物件」を調べることができます。
2-2物件調査
特に一戸建ての売却のときには、物件調査は要注意です。なぜなら、土地の測量がされているか、境界はきちんと整備されているかを確認する必要があるからです。
もし、境界が明確でなければ測量士に依頼して、地積測量図などを作成する必要があります。この辺りは専門知識がない一般人が行うにはリスクが高いです。
2-3書類作成
一番面倒な作業が書類作成です。個人で不動産取引する場合には、上述したように宅建業の取引に当たりません。そのため、極論をいうと「重要事項説明書」も不要ですし、「売買契約書」も不要です。ただ、実際にはこれらを作成しないと買主のリスクが大きいですし、住宅ローンを組むときには必要な書類になるので、売主自ら作成する必要があります。
今ではインターネット上で、ひな形をダウンロードすることはできます。ただ、特に重要事項説明書に関しては物件によって内容が異なります。そのため、不動産屋を通さずに書面を作成すると、売主・買主ともにリスクがあるのです。
2-4登記関係
登記関係は、実は司法書士の資格がなくてもできます。しかし、関連する金融機関などが嫌がるため、基本は司法書士に登記を依頼します。
この司法書士の選定も売主が行い、金額交渉や司法書士とのやり取りも売主自ら行う必要があります。
2-5瑕疵担保責任
売主は瑕疵担保責任を負います。瑕疵とは「欠陥」のことで、瑕疵担保責任とは欠陥があったときに売主が責任を負うということです。この瑕疵担保責任を負う期間は買主・売主が合意の元で決めます。一般的には半年~1年程度で設定するものですが、買主としては長い期間保証してほしいです。
そのため、不動産屋が仲介していないと、話がまとまらないことが多いです。不動産屋というプロを挟むということは、直接交渉をしないという点でも取引を円滑に進めているのです。
2-6購入者の資金計画の確認
また、購入者の資金計画も売主自らが管理する必要があります。たとえば、住宅ローンを組むのであれば、「どの銀行で」「いくらの借入を起こし」「審査はどうなったのか」などを把握しておく必要があるということです。住宅ローンの斡旋をすることもできないので、買主も自ら銀行を探すという意味では、買主にも負担がかかります。
3.不動産屋を通さないリスク
不動産屋を通さずに取引するということは、前項のように売主の手間が大きく増えるのです。まとめると以下のような点に注意する必要があります。
①集客活動に苦戦する可能性がある
②専門的な知識が必要な物件調査が必要
③専門的な知識が必要な書類作成が必要
④司法書士の斡旋も自ら行う
⑤瑕疵担保期間など、直接交渉することが多い
⑥購入者の資金内容を全て把握する
そのため、結論をいうと、近親者への売却など以外では、不動産屋を通して取引した方が良いです。
上記①~⑥の手続きは非常に専門性が高く、手間がかかるため、素人が行うと後々トラブルになる可能性が高いからです。また、買主側も不安になるため、思うように売却活動が進まないケースも多いです。
4.まとめ
◇やれることはやり、難しいことは専門家に
このように、不動産屋さんを通さなくても、家を売却する取引はできます。
しかし、一方で上述したようなリスクがある点も理解しておきましょう。それでも不動産屋を通さずに取引をしたい場合は、「書類作成は司法書士に依頼する」など、要所でプロの力を借りると良いでしょう。
すべて自分でやるとなると相当の労力がいるので、一部だけ専門家に依頼するなど、役割分担をすることでもかなり金額を抑えることが出来ますよ。
◇一括査定サイトは無料なので、とりあえず無料の範囲で調べてもらう
もしくは、不動産一括査定サイト利用するという手もあります。それこそ不動産鑑定士などに依頼すると高額な依頼料がかかりますが、仲介をしている不動産屋さんでは「鑑定士」としての資格はないためお金を取ることができません。そのため、仲介業者は有料で不動産査定を行ってはならないのです。
つまり、仲介業者にとっては査定業務は一銭にもならない仕事ですが、その後媒介契約を結んでほしいがために行っています。逆にいえば、査定だけ行ってもらえばお金をかけずに自分の不動産の資産価値を知ることが出来ます。まずは一括査定サイトで査定してもらい、目安となる売却額を知ることからスタートしてみましょう。その時に注意すべき点は、出来るだけ複数の業者に査定を行ってもらうことです。不動産業者は査定の資格を持っているわけではありませんし、無料なのであまり責任がありません。1社だけで済ませると見当違いな価格になるかもしれません。すくなくとも、4社以上から査定をしてもらいおおよその価格を知っておきましょう。
自力で売却活動をすることは想像以上に大変だと思いますが、こうすることで万が一気持ちが折れてしまった場合でも代わりの方法を確保することができます。一括査定サイトは上手に利用するととても便利ですよ。