Fintechに続き、不動産業界にも「不動産とITテクノロジーが融合した”不動産Tech(テック)”」が注目され始めています。
不動産市場は、資産規模では約2,200兆円、不動産業の国内総生産としては約62兆円(全体の13.2%)です。
しかし、不動産価格の不透明性、不動産業者の信頼性、人口減が今後80年で半分になるという悲観的な見通しなど、これまでの取引の仕方だけでは活路が見出しづらい状況です。
その状況をむしろチャンスと捉えているのが、不動産Techに取り組む企業です。
◆不動産Techの概要
2017年6月1日にリマールエステートとQUANTUMが発表した不動産Techのカオスマップがあります。
画像参照:リマールエステートより
不動産Techはカテゴリーとして
・VR
・IoT
・物件情報・メディア
・ローン・保証
・シェアリング
・クラウドファンディング
・マッチング
・価格可視化・査定
・業務支援
・不動産情報
の10カテゴリに分けられています。
上記カオスマップを元に、具体的に企業の取り組みを紹介していきましょう。
◇不動産Tech に取り組む企業 その1
カオスマップ 「不動産情報」
不動産のポータルサイトHOME’Sを運営するLifull(元ネクスト)は、今年、大々的に「不動産Tech(ReTech、リーテック)戦略」に取り組むと発表しました。
下記の4点を課題とし、
・物件の資産価値の適切な評価
・情報の非対称性(物件情報・価格など)
・IT化の遅れ
・国内外のさらなる不動産投資の活性化
不動産市場の活性化を図る方針です。
IT化の遅れについては、人工知能や仮想現実など最新のテクノロジー使う予定です。取引のオンライン化も同時進めると予定しています。
IT化を促進することで、瞬時に世界中に不動産情報を伝えることができるようになります。
これまで国内マーケットを中心に発信していた情報を、視覚化することで世界をマーケットに取引できるようになります。
2025年までに世界100か国に展開する予定です。
不動産仲介業者の温度感とエンドユーザーの温度感の両方を知る不動産のポータルサイトならではの強みを生かした戦略です。
◇不動産Tech に取り組む企業 その2
カオスマップ 「業務支援」
▶Linough
「スマート内覧」という、スマホやタブレットから内覧を予約できるサービスです。夜間や休日など、不動産業者が対応できない時間帯でも、都合の良い時間に合わせて内覧をすることができます。
鍵の開閉もスマホや電話で行い、不動産業者が立ち会わないため、自分のペースでじっくりと見ることができます。
これまで、不動産業者を通じて毎回ヒアリングや家を探している理由を説明する時間を省略することができます。
信頼を寄せる不動産業者ひとつを見つければ、あとは、自分のペースで好きなように探すことができます。
認知度は低いですが、ユーザビリティーや利用者の立場で考えると不動産を探す際の営業マンとの駆け引きをなるべく少なくし、ストレスを減らした上で検討できるなど、不動産検討を前向きに進めるツールになると思います。
◇不動産Tech に取り組む企業 その3
カオスマップ「マッチング」
▶リノべる
nekonoteという施工サービスを三井物産から13億円資金調達しサービスをリリースしました。
リノべるが保有するリノベーションで起こる施工トラブルをよりスムーズに進められないかというノウハウやアイディアが元になっています。現場から生まれた発想のため、職人さんやメーカー、設計士など各担当者がそれぞれのデバイスで閲覧できるように工夫されています。
また、具材の変更など、お客様の要望や変化しやすい状況をよく踏まえ、動作を軽く、そして担当を問わず同じ情報を閲覧できるサービスです。
確認と状況の変化をつど電話で管理する手間が減ることで、リフォーム担当者は別の契約を取る時間をつくることができます。
アプリという誰もがダウンロードでき、使いやすいツールをリノベーションのインフラとすることで、よりリノベーションをして暮らしたい人たちのストレスを解消し、ニーズの底上げにつながるでしょう。
◇不動産Tech に取り組む企業 その4
カオスマップ「ローン・保証」
▶WhatsMoney
16,000超えの住宅ローンから、お客さまに一番フィットした住宅ローンをおすすめする、WhatsMoney。借り換えもレコメンドしてくれるなど、資産管理ツールとして注目が予想されます。
住宅ローンは勤務形態等によって大手仲介を通じて申し込みをすると金利の値引きが発生するなど、忙しい時間をやりくりし足を運ぶストレスがありましたが、こうしたサービスを使うことで仲介とツールのみで完結し、今後は解消していくでしょう。
これまで情報戦だった不動産購入の検討は、不動産TechによりIT化が進むことでより時間的、体力的なストレスが軽減されるでしょう。
◇不動産Tech に取り組む企業 その5
カオスマップ「シェアリング」
▶SpaceMarket
時間貸しで、部屋を借りることができるシェアリングサービスです。
全国の時間オッケーな不動産情報が掲載されています。1時間1,000円からレンタルが可能です。
「副業でカフェをやりたい!」「結婚式の2次会で使いたい」「趣味のサークル活動で使いたい」など様々なニーズに応え、都市部では登録物件数が増えています。
これまで時間貸しといえば味気ない会議室だったものが、おしゃれな空間を誰でも借りることができ、起業の後押しや女性の社会復帰の一歩にもつながっているようです。
◆まとめ
2017年は「不動産Tech」というキーワードが注目され始めています。製造業やFintechなど各産業がテクノロジーによって大きく変革していることを参考にしながら、不動産業界も市場規模拡大へつなげられないかと模索を始めています。
NTTデータのレポートによると大手不動産業界だけでは対応しきれておらず、三菱地所や三井不動産などを始めとし、資本提携等を行い新しいニーズを取り込む流れを積極的につくっているそうです。
人口減という局面をきっかけに大きく変わろうとする不動産業界。不動産Techを介入させて伸びしろをつくり活路をどれだけ見出せるのか期待したいところです。
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