不動産でとても大事な「権利証」なくしても売却できる?

テレビドラマなどで、土地と建物を売る際に「権利証」が登場するシーンを見たことはありませんか?

「うちはそんなにお金持ちじゃないから」とお考えの方、一戸建てやマンションを持っている人にとって権利書はとっても重要なもので、紛失や盗難などあると非常に面倒です。

かなり重要そうな書類ですので、「万が一紛失しようものならば不動産の売買ができない」と考えている方も多いでしょう。

今回は、権利証をなくした際に不動産売却が可能か、可能ならばどのような手続きを踏めばいいのかについて説明します。

■権利証は現在「登記識別情報」に変更されている

以前は不動産売買において欠かせない書類の一つだった「権利証」ですが、現在ではその役割を「登記識別情報」に譲っています。

 

□権利証は不動産取引になくてはならない書類

権利証とは通称であり、正式名称を「登記済権利証」といいます。

登記済権利証とは、不動産の所有権を取得した際に法務局から発行されていた書類で、法務局から登記済みの赤いハンコが押されて不動産の所有者に対してのみ発行されます。

不動産売却の際の名義変更や、住宅ローン借り換えの際の抵当権設定のときは、法務省に提出しなければなりませんでした。

ただし実際は、権利証だけではなく、実印による捺印、印鑑証明書の3点セットで本人確認をしていました。

□法律改正によって「登記識別情報」に変更

しかし、法律改正によって現在では権利証ではなく、「登記識別情報」が交付される仕組みとなっています。新規に登記済権利証が発行されることはありません。

登記識別情報とは12桁の英数字のパスワードのようなもので、当初は目隠しシールで、現在では徐々に袋とじ式の目隠しに移行して、情報が漏れないようになっています。

権利証と同様に、登記識別情報は不動産の所有者しか知りえない情報です。

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■紛失しても悪用の可能性は低い

万が一権利証を紛失しても、それを取得した第三者によって悪用される可能性は極めて低いです。

前述したように、権利証だけでは効力を持たず、実印と印鑑証明書がないと手続きができないからです。

「不正登記防止申出」をすれば、紛失の際の悪用の可能性も限りなくゼロになります。

完全に不正登記を防いでくれるわけではありませんが、法務局の方で警戒をしてくれます。

ただし、権利証と一緒に実印と印鑑登録書を保管していて、丸ごと盗まれてしまうと悪用の可能性が高まりますので、保管は厳重にしておきましょう。

□登記識別情報は失効申出ができる

いくら悪用のリスクが低いとしても、可能性がゼロでないなら不安です。

そこで登記識別情報に限り、失効申出ができるようになっています。

失効申出書」を作成して提出すると、登記識別情報を無効化できます。

□権利証の再発行はできない

権利証や登記識別情報を紛失しても、法務局の方で再発行をしてもらうことはできません。

これら2つの情報のいずれもないとなると不動産の売買や名義変更ができなくなってしまうのでは、と考える人もいるでしょうが、心配はいりません。これら2つの情報がなくても、以下の方法を使えば不動産売買は可能です。

権利証や登記識別情報がなくても、以下の方法を使えば不動産売買は可能です。

■司法書士・弁護士による本人確認情報

最も一般的な方法が、司法書士や弁護士に本人確認をしてもらうことです。

ここでいう本人確認とは、司法書士や弁護士と名義人本人が面会をして、司法書士が聞き取りをした上で、その内容を文書化したものです。

司法書士は聞き取りの際に、不動産売買契約書や領収書を名義人本人から見せてもらい、権利証や登記識別情報を紛失した理由なども聞きます。

その上で「この人は名義人本人です」というのを証明する「本人確認情報」を発行して、弁護士や司法書士が登記所へ赴き登記申請書とともに提出をします。

比較的時間のかからない方法ですが、費用は若干高額で5万円~10万円程度します。

□公証人による本人証明

司法書士ではなく公証人による本人証明も利用可能です。

名義人本人が登記の委任状や登記原因証明情報をあらかじめ作成しておき、公証人役場へ赴きます。

公証人の目の前でこれらの書類にサインと捺印をして、公証人がそれを認めて登記申請書とともに登記所へ持って行きます。

司法書士と比べて費用が割安であり、1万円もあれば本人証明をしてもらえます。

□登記所からの事前通知

登記所からの事前通知を利用することもできます。

権利証もしくは登記識別情報がない状態で所有権の移転登記をすると、登記所から売主(かつての名義人)のところにはがきが届きます。

そのはがきには、「あなたの不動産が売られるようですがいいですか」というような内容が書かれており、2週間以内に署名と捺印をして売主が返送する仕組みです。

仮に売主が期限内にはがきを返送しなかったら、取引は成立しませんので、お金だけもらって権利を渡さない売主さんは詐欺や横領で告発される可能性もあります。

基本的に、金銭のやり取りを伴う不動産売買では事前通知制度は使われません。

■相続の場合は権利証が不要

親が死んで不動産を相続することになったものの、権利証がどこにあるか分からないと心配する方もいるでしょうが、相続登記の場合は権利証が必要ありません。

権利書なしで、戸籍や住所証明などで相続人であることを証明できればいいのです。

相続が完了しますと、新しい登記識別情報が発行されます。

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