不動産を売却したときには確定申告が必要な場合があります。しかし、確定申告については中々な馴染みがない人も多いのも事実です。そこで今回は、不動産売却と確定申告についてまとめてみました。
1.確定申告が必要か不要か
不動産売却をするときには、どんなときでも確定申告が必要になるというワケではありません。不動産売却をした際に譲渡所得(売却益)によって以下3つのパターンに分かれます。
①譲渡所得がプラス:確定申告が必要
②①の場合でかつ「3,000万円の特別控除」を利用する:確定申告が必要
③譲渡所得がマイナス:確定申告は任意
このときに気を付けなくてはいけないのは、特に②です。後ほど詳しく説明しますが、「3,000万円の特別控除」を利用して譲渡所得がマイナスになるときでも確定申告が必要だからです。
2.譲渡所得と控除について
つづいて、譲渡所得と控除について解説します。流れとしては以下の通りです。
①譲渡所得を計算
②3,000万円の特別控除に該当するか確認
③3,000万円の特別控除に該当するなら①から控除する
2-1譲渡所得の計算
譲渡所得の計算方法は、単純に「売却金額-購入時金額」ではなく、以下のような式になります。
「売却価格(譲渡価格)-(売却時にかかった諸費用+所得費用)-(購入時のマンション価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用))-(特別控除額)」
つまり、売買時にかかった諸費用と減価償却費用、さらに特別控除額を加味して計算するということです。たとえば、以下のような物件の譲渡所得を計算してみます。
①売却価格は3,800万円で売却時諸費用は140万円
②購入時価格は2,900万円で購入時諸費用は120万円
③減価償却費は420万円
この場合には、「(3,800万円ー140万円)-(2,900万円+120万円-420万円)」という計算になり、1,060万円が譲渡所得に該当します。つまり、家を売ったときに1,060万円得をしたと判断されます。
この減価償却費などの金額は計算するのが面倒です。また、購入時の諸費用額が不明な場合もあります。そのようなときには計算は複雑になるので、譲渡所得の計算は不動産会社にお願いすることをお勧めします。
減価償却費を簡単に説明すると、年月の経過による家の劣化に応じた値段を差し引きことです。この計算方法は年数によっても変わり、木造か鉄筋コンクリートかなどによっても変わってきます。非業務用のマイホームなどの場合、業務用の物件よりも大切にされていることを考慮して耐用年数が1.5倍の33年となっています。
2-2特別控除について
上述したケースだと、1,060万円の譲渡所得に対して税金がかかります。そのため、次のステップとしては、この物件に「3,000万円の特別控除」が利用できるかを確認します。3,000万円の特別控除を受けられるかどうかは、国税庁ホームページか税務署を確認いただきたいのですが、概要は以下の通りです。
【3,000万円の特別控除が受けられる条件】
①自分の家、もしくは借地権を売る
②現在居住していなければ、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る
③すでに家を取り壊していたら、取り壊した日から1年以内に売る
④直近2年間で住宅に関する特例を受けていない
⑤近親者への売却ではない
このように、基本的に自分の家を、通常通り売却すれば3,000万円の特別控除は受けられます。
2-3譲渡所得がマイナスのとき
さて、さきほど譲渡所得がマイナスときには確定申告は任意といいましたが、確定申告をすれば税金が安くなるケースがあります。仕組み簡単にいうと、譲渡損失が出た年は譲渡損失の金額を給与所得や事業所得から差し引くことができるのです。
たとえば、給与所得が年間600万円あった年に、譲渡所得がマイナス100万円だったとします。そのときには給与所得の600万円から100万円を差し引けますので、年間所得が500万円に減り、税金が安くなるのです。また、1年間で引ききれなかった場合には、その損失額を3年間繰り越すこともできます。
ただ、このようなことができる条件として、「所有期間5年以上」などの条件があるので、国税庁ホームページか税務署で確認ください。
こちらでも詳しく紹介しています。(⇒「譲渡損失の繰越控除」とは?住み替え時に知っておきたいお得な制度)
【居住用の不動産を譲渡(売却)した場合の特例】
所有期間 | 適用される特例 | ||
譲渡による利益あり | 10年超 | 買い換える | 特定の居住用財産の買い換えの特例 |
買い換えない 買い換え特例を使わない |
3,000万円の特別控除&軽減税率の特例 | ||
5年以上10年以下 | 3000万円の特別控除の特例控除しきれない利益について、長期譲渡所得の一般税率【20%(所得税15%+住民税5%)】 | ||
5年以下 | 3000万円の特別控除の特例控除しきれない利益について、短期譲渡所得の一般税率【30%(所得税30%+住民税9%)】 | ||
譲渡による損害あり | 5年超 | 買い換える | 居住用財産の買い換えなどの場合の譲渡損失の損益通算および繰り越控除の特例 |
買い換えない | 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例 | ||
5年以下 | 適用される特例はなし |
3.確定申告について
上述した通り、譲渡所得がある場合と、「3,000万円の特別控除」を利用する場合には確定申告は必須条件になります。
3-1確定申告とは?
そもそも確定申告とは、毎年1月1日~12月31日までの1年間の所得を全て計算し、その所得額に対して課税される税金を申告&納付する「手続き」のことです。サラリーマンであれば、会社の方で納税してくれるので、確定申告は不要です。
しかし、不動産の売却などで所得が発生した場合には、会社が納税してくれるワケではありません。そのため、自分で所得(譲渡所得)を計算して申告・納税をする必要があるのです。
3-2確定申告方法は?
結論からいうと、国税庁ホームページの「確定申告書の作成」ページから、ネット上で作成する方法が圧倒的に早いです。ネット上から作成すれば上述した「減価償却費用」も自動で計算してくれます。また、さきほどの「譲渡損失」の場合にも、数字を入力するだけで損失額や適用条件に合致しているかを教えてくれるのです。
そのため、確定申告に必要なもろもろの書類を入手しに、わざわざ税務署へ行く必要もありません。ただ、自分で以下の書類を用意する必要がある点は認識しておきましょう。
①不動産売却時の売買契約書
②不動産購入時の売買契約書
③仲介手数料などの領収書
インターネット上で作成した書類は、専用機器があればそのまま送信できます。専用機器がない場合にはプリントアウトして、税務署へ届けに行く必要があります。ただ、郵送対応も可能です。届け出る場合も郵送の場合も、自分の控えが欲しければ、切手の貼った返信用封筒を同封して「控えを返送ください」とメッセージを添えておきましょう。
4.まとめ
このように、不動産を売却した場合には、ケースによって確定申告が必須かどうかは決まります。いずれにしろ、確定申告の方法が気になる方は、国税庁ホームページの確定申告作成コーナーにアクセスしてみると良いです。このページを一度操作してみれば、基本は入力作業をするだけの簡易なものということが分かると思います。