不動産を売買するときには、売却行為自体がキャンセルになることもありますし、売買契約がキャンセルになることもあります。そんなときに疑問に思うのが「仲介手数料はどうなるのか?」ということです。仲介手数料は100万円以上支払うことも多いので、支払い義務があるかどうかで売主の負担は大きく変わってきます。
今回は、そんな「キャンセル時」の話です。
1.売却行為のキャンセル
不動産を売却するときには、売主と不動産会社の間で「媒介契約」を結びます。結論から言うと、媒介契約を結んだ後に売主の都合で「売却行為」をやめる場合には、不動産会社は売却行為に費やした費用を売主に請求する場合があります。
1-1原則ルール
大抵の媒介契約書には「報酬の請求」の項目に「目的物権の売買または交換の契約成立したときは仲介手数料を支払う」と記載されています。そのため、原則的には不動産の売買が成立したときに費用発生があるということです。
ただし、媒介契約書の内容は、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約で異なります。特に、一般媒介契約と専任系の媒介契約は内容が大きく異なっているのです。
1-2媒介契約ごとの傾向
上述した「不動産会社は売却行為に費やした費用を売主に請求する場合がある」というのは、実際に請求するかどうかは不動産会社によります。結論からいうと、一般媒介契約の場合に請求するケースは少なく、専任系の場合には請求するケースが多いです。
理由としては、「広告投下量」と「人件費」を専任系媒介契約の方が多く投下していることが多いからです。専任系の場合は売却を担当している不動産会社は1社のみなので、自社で成約できる可能性が高く、不動産会社も費用投下するというワケです。
実際に請求する費用は、その時点でかかっている「広告費」や「雑費(謄本取得費用など)」になります。媒介契約書には「費用償還の請求」の項目に「不動産会社の責任でないことにより専任媒介契約が解除されたら、売却活動に要した費用を売主に請求できる」と記載があります。
そのため、売主の自己都合での売却キャンセルの場合、不動産会社は費用請求することができるのです。
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2.売買契約のキャンセル
つづいて、売買契約は成立したにも関わらず、売買契約自体がキャンセルになるケースです、結論から言うと売買契約自体がキャンセルになった場合は、売主の自己都合の場合には仲介手数料の支払い義務はあります。ただし、売主の責任でないキャンセルは、仲介手数料を支払う必要はありません。
2-1売主の自己都合でのキャンセル
売主の自己都合のキャンセルとは、「気が変わった」や「ほかの買主に売りたい」などの理由です。このような場合には、そもそも売主は買主に対して手付金額と同額を違約金として支払います。そして、仲介を依頼していた不動産会社にも仲介手数料を支払う義務が生じるのです。
なぜなら、仲介手数料は不動産の売買契約が成立した時点で、支払い義務が発生しているからです。そのため、引渡前に売買契約がキャンセルになっても、仲介手数料の支払い義務は残るというワケです。
ただし、これらの事由については判例がいくつもあるほど、明確な定義はありません。理由は、「売買契約は成立しているが目的(不動産の決済)は達成していない」という捉え方もあるからです。
そのため、売買契約が成立して引渡し前に契約がキャンセルになった場合は、仲介手数料は「全額」支払うことが少ないです。一般的には「お礼金」として半額程度の支払いになると思っておきましょう。最終的には売主と不動産会社の協議で決めることになります。
2-2売主の責任でないキャンセル
一方、売主の責任ではない売買契約のキャンセルの場合には、基本的には売主は仲介手数料の支払い義務はありません。売主の責任ではないキャンセルで最も多いのは、「買主側の住宅ローン不承認」になります。
買主が住宅ローンを組んで不動産を購入するときは、まず住宅ローンの仮審査をします。その仮審査に承認されれば、売買契約を結ぶことができます。ただ、問題になるのは売買契約を結んだ後に住宅ローンの「本審査」をするのです。
仮審査に承諾して本審査が否決になることは滅多にありませんが、本審査に否決されれば当然ながら不動産の引渡はできません。そのため、自ずと不動産の売買契約キャンセルになります。この「融資不成立」の状況のときは、きちんと媒介契約書に記載があります。
媒介契約書にある記載は、「報酬受領の時期」に「融資不成立により契約が解除されたときは、不動産会社は売主に金銭を返還する」という旨です。仲介手数料は、契約時に半金支払っていることが多いので、その半金を売主に返還するということです。
3.まとめ
不動産の売却行為のキャンセルは、キャンセル時点でかかった費用は支払う可能性があります。
また、不動産の売買契約キャンセルは、売主の自己都合であれば仲介手数料の支払い義務は残ります。
しかし、融資不成立のときには、仲介手数料を支払う必要はありません。ただし、これらに関しては明確な決まりがない場合もあるので、不動産会社と良く話し合いましょう。